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概要

外大通信デジタルブック

27 東京で主宰する語学サロンの受講者から、自らの英語の上達ぶりに驚きの声が続々と寄せられる。「学生のとき、3回赤点をとったことがある私が、このメソッドで英語を話すことができるようになったのだから、きっとだれでもできます」といった具合に。 指導法はシンプルだ。コツは集中と選択。習得したい内容だけに絞り、1日30分だけ。こつこつ続ける。「英語で困っている人は、何をやっていいかわからない。仕事で使いたい人が観光英語の本を買ってしまったり、使わない単語を懸命に覚えようとしたり」 信念を自著「30日で英語が話せるマルチリンガルメソッド」(かんき出版、2016年)にまとめた。掲げる原則は▽1日30分以上、学習しない▽単語は勉強しない▽文法も勉強しない▽独力で学ぶ▽嫌いなことはしない(好きなことだけやる)――。取り組むべき12項目の勉強法(ワーク)を示す。 「単語、文法、構文を覚えるのではなく、自分で使いたい単語を探すようなやり方です。英語でスピーチをしたい人には、その分野の英語の本を紹介します。英語で英語を学ぶことをベースに、受講者の課題ごとに本や学び方をアドバイスします。1カ月ぐらいで、仕事で使うレベルの英語が話せるようになります」。この3年で800人以上を教えた。 英語学習の基礎にあるのは関西外大で学んだことという。短大の1年次、海外から招聘した教員によるIESプログラムを受講。基本の2000単語を使いこなせるようにと、みんなでとことん覚えた記憶が残る。「朝9時から夜9時まで大学にいて、英語漬けの学生生活でした」と振り替える。 2年次は米ユタ州立大学に語学留学する。そこでの体験が転機となった。当時、米国の大学は日本に先駆けてIT(情報技術)が大流行。短大卒業の翌年からユタ州立大に編入し、ITとビジネスを4年間学んだ。 卒業後はITの専門家として日英バイリンガルで働ける職種を目指した。外資系銀行の日本法人を手始めに、12年間で5回転職した。 外資系で貪欲にキャリアを積んだのは、英語で苦労した体験があったからかもしれない。英語科がある高校の受験に失敗。志望校でない高校に進み、2年生のとき英国に1年留学したが英語がわからず挫折を味わっている。 35歳で、アジアのリーダー養成プロジェクトにボランティアで参加した。外資系以外の人々と触れあったことで、新しいことをやってみたいと思い立つ。英語に楽しく触れられるイベントが評判となり、2014年、マルチリンガルクラブを設立した。 18カ国以上の国籍の人と働いてきた。「言葉は文化」が持論だ。相手の言葉を話すことで、その文化を受け入れる。英語のほか、中国語、韓国語、タイ語、マレー語、スペイン語、トルコ語を独学で習得した手法がメソッドに生かされている。 学生には、「英語で学べる未来を考えて勉強してほしい」とエールを送る。英語を学ぶのが目的ではなく、英語で何が学べるかが大切だと説く。自身が経験したITのように、英語でしか学べないものもあると。 リオデジャネイロ・オリンピックでボランティア通訳をした縁で、2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に籍を置く。年度明けからサービスマネジャーとしてボランティア集めが本格化する。外資系を渡り歩く独自の学習法を考案基礎は英語漬けの外大時代英語で学べる未来考えて著書を手に受講者たちとリオ五輪にボランティア通訳として参加