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概要

外大通信デジタルブック

22 第1回は外国語学部の加藤隆浩教授が「これがジャガイモですか?」をテーマに講演しました。加藤教授はアンデスで祈祷師の修行をした際、教えを受けた師から贈られた民族衣装の正装姿で登壇。「研究を始めたときの初心を忘れないために」と自身の姿を説明しました。 ジャガイモは南米原産で、標高3500メートル前後のアンデス高地で生産されていました。高い生産性、寒さに強く、痩せた土地でも収穫できるという利点の半面、苦く毒がある▽長期保存ができない▽重い―という「三重苦」が欠点でした。 加藤教授は「偶然の出来事だったと考えられる」として、アンデス高地の昼夜の大きな温度差で、ジャガイモが自然のフリーズドライにかけられ、「三重苦」が一気に解決したと解説しました。冷凍と解凍の繰り返しで、苦味と毒素が水分とともに抜け、軽くなり、保存期間が延びたのです。アンデスのジャガイモ。白いものは皮を剥き、色の濃いものは皮付き。自然環境でフリーズドライされました 16世紀前半、スペイン人の侵略により、ジャガイモは欧州に渡ります。当初は、花を観賞する程度の存在でしたが、長い戦乱を契機に食料として注目を集めました。やがて、生産量は小麦等をしのぐようになります。 しかし、ジャガイモへの過剰な食糧依存により、19世紀半ばのジャガイモの病気の蔓延に際し、飢饉が起きます。アイルランドで100万人とされる餓死者を出し、多くの人がアメリカに移住しました。後に第35代米国大統領を出すケネディ一家もその中に含まれています。 「ジャガイモがなければ、ケネディ大統領はおらず、さらに言えば人類は(ケネディ大統領が宣言して実現したように)月に行かなかったかもしれません。このようにモノを通して歴史をみると、いろんなことがつながって新しい見方ができます」と、加藤教授は講義を締めくくりました。―カカオ、ジャガイモ、トマトの文化論―第1回連  続公開講座新大陸からの贈物イベロアメリカ研究センター主催「これがジャガイモですか?」加藤隆浩・外国語学部教授Potat1 Kat Takahir Caca2 Suzuk Moto Tomat3 Numat Koich第一線の研究者が中南米の歴史文化を紹介関西外大のイベロアメリカ研究センターが主催、あまり日本に知られていない中南米の文化や歴史を紹介し、第一線の研究者が講演する連続講座は、広く市民に開かれた外大名物の学術的試みとしてすっかり定着しています。今年度のテーマは「新大陸からの贈物―カカオ、ジャガイモ、トマトの文化論―」で、11月中に計3回の講演が中宮キャンパスのマルチメディアホールで行われました。