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概要

外大通信デジタルブック

23カカオがテーマの公開講座の会場日本に伝わったトマト。カボチャのようにひだが入っている(右)。左は狩野探幽のトマトの画 今シリーズ最終の第3回講座は、短期大学部の沼田晃一教授の「アンデス原産スーパー野菜―トマトの魅力―」でした。 トマトは世界で最も多く生産されている野菜で、最大の消費国は中国。1人あたりの年間消費量はギリシャ、イタリア、スペインなど南欧や、トルコ、イスラエルなど中近東、アメリカ、カナダなど北米が多く、日本はトップ国の13分の1の消費量です。量の多寡について沼田教授は、日本では生食用のピンク系トマトがサラダなどで食べられ、大消費国は赤系トマトを料理の材料や調味料として大量に用いるためと分析しています。 トマトは5000年前ごろにはアンデス山脈で食用にされ、メキシコに伝わりアステカ族が栽培していたとされます。やはり16世紀のスペイン人の侵略で欧州に渡ります。17世紀には、欧州か北米経由で日本に伝えられました。江戸時代は真っ赤な果実の色から食用ではなく観賞用とされていました。 沼田教授はトマトを「グルタミン酸を有し、甘味、酸味、旨味のバランスのとれた天然の調味料」と定義します。また、活性酸素を除去する力を持つリコピンを多く含み、がん、糖尿病、肥満、動脈硬化等の予防に効能があるとされます。 沼田教授は約20年間、トマトジュースを飲み続けて、自ら実証実験を行っていると言い、「赤系、つまり生食よりトマトジュースのトマトの方がリコピンは豊富で、オリーブオイルとともに摂取すると吸収率が高くなります。ただし、毎日継続して摂取しないと効能はありません」と話していました。 商社マンとしての経験が長いことから、沼田教授は、トマトの栽培法の新たな発見、収穫したトマトの消費方法、料理方法やトマト製品の種類まで、具体的な事例を挙げて解説していました。 第2回は国立民族学博物館の鈴木紀(すずき・もとい)准教授による「チョコレートとチョコラテ―カカオを楽しむ2つの伝統―」の講演でした。 カカオは中南米原産のアオギリ科植物。種子を食用にします。緯度が20度以内の高温多湿の地に生育します。メキシコ南部のオルメカ文明(紀元前1200年頃?同400年頃)で食されていたとみられ、後のマヤやアステカ文明では、トウガラシ等で辛味を付け、泡立てて、冷やして飲んでいました。貴重な作物のため、貨幣の代用として、貢物にしたりしていました。 カカオが欧州に渡来するのは16世紀初頭のコロンブス第4次航海。続くスペイン人の侵略で飲用方法が考案され、欧州で支配者層を中心に流行しました。飲み方は、温めて砂糖で甘くし香辛料を添加し泡立てていました。 19世紀にはカカオに関する4つの発明がなされます。最初の発明で、カカオマス(焙煎カカオをすり潰したもの)からカカオバター(カカオの脂肪分)を分離。2つ目で、カカオマスにカカオバターをさらに添加し固形のチョコレートを製造。3つ目で、粉ミルクを混ぜミルクチョコレートを製造。最後は、カカオバターを均一にし、チョコレートの口どけが滑らかになるようにしました。 鈴木准教授は、固形のカカオ菓子を「チョコレート」、カカオの飲料を「チョコラテ」として、現代のチョコ文化を説明。また、病害虫に弱く価格変動の大きなカカオ栽培で、開発途上国の作物を適正に、継続的に取引して生産者の生活を安定させるフェアトレードが導入されていることや、豆からチョコレートまでの工程を一貫して行う特別でユニークな製造を紹介しました。鈴木准教授は、「フェアトレードやスペシャリティなチョコレート製造は、カカオの第5の発明といえます」と話しました。第2回「チョコレートとチョコラテ―カカオを楽しむ2つの伝統―」鈴木紀・国立民族学博物館准教授第3回「アンデス原産スーパー野菜―トマトの魅力―」沼田晃一・短大部教授