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概要

外大通信デジタルブック

23 | THE GAIDAI No. 299 Autumn, 2019【パラトライアスロン】2016年に開催されたリオデジャネイロパラリンピックから正式競技になった。スイム、バイク、ランの3つの持久系競技を連続して行い、その合計タイムを競うスポーツ。レースの距離はオリンピックの半分で、スイム750m、バイク20km、ラン5kmの計25. 75km。障がいによって6つのクラスに分かれている。 本学を卒業後、建設会社に就職したが、26歳の時に仕事中の事故で利き腕の右腕を失った。絶望から救ってくれたのは、リハビリの延長で出合ったトライアスロン。事故から2年後の2015年8月、国際大会「ASTCアジアパラトライアスロン選手権」で優勝し、トライアスロンの道に進むことを決めた。さらにその2年後には、所属する障がいのクラスPTS4(手足欠損など運動機能障がいのクラス)で世界ランキング1位に浮上した。2020年に開催される東京パラリンピックでは、表彰台に立つことが目標だ。 事故から半年後、リハビリの一環として水泳を始めた。一緒に水泳していた人に大学までサッカーをしていた話をしたら、「泳げるし、サッカーしていたのであれば走れる。あとは自転車に乗るだけだ」とトライアスロンへ挑戦することを薦められた。 小学1年生からサッカーをはじめ、大学までボールを追いかける日々。滋賀県立水口高校時代は、滋賀県代表選手として、日本代表でも活躍する乾貴士選手(県立野洲高校出身。ソシエダ・デポルティーバ・エイバル所属)とも一緒のチームでプレーした。サッカー一筋の生活で身に付けた強靭な脚力と体幹、そして、負けず嫌いな性格。自分の実力を試そうと、水泳チームの仲間の薦めで、2015年6月に地元・滋賀県で開催された「第1回びわ湖トライアスロン in近江八幡大会」に出場し、初のレースで準優勝。それを見ていたトライアスロンチームの監督に「2カ月後にフィリピンで行われる『ASTCアジアパラトライアスロン選手権』に出場しないか」と声をかけられ挑戦。初の海外大会で優勝を果たした。 「生まれて初めて金メダルを手にしました。優勝できてほっとした。トライアスロンの道に進む決心ができた」。その後、国際大会にも出場しコツコツと実績を積み上げ、2 0 1 7 年7 月にはPTS4クラスで世界ランキング1位にランクイン。現在は、ナショナルチームに所属し強化指定選手として、今年は、イタリア、スペイン、スイス、韓国、カナダ、オーストラリアなどで行われた大会にも参加した。 トライアスロンは、2016年のリオデジャネイロパラリンピックから正式競技に。しかし、障がいのクラスPTS4は対象にならなかった。リオパラリンピックに出場することを目標に練習をしてきたため、ガッカリしたが、落ち込んではいられない。次の大会に向けてトライアスロンという競技を楽しみながら練習を続けてきた。そして、2020年の東京パラリンピックでは、PTS4も対象になることが決まった。「東京パラリンピックは、一つの通過点。この機会にトライアスロンを知ってもらい、パラスポーツで生活できる人を増やしたい」と話す。 関西外大に進学を決めたのは、高校のサッカー部の先輩の薦めだ。在学中は、サッカー部に所属し、練習に明け暮れる日々を過ごした。部活動以外では、友人と遊んだり、留学生と交流したり、笑いが絶えなかった。モットーにしている「全力で今を楽しむ」の精神で、新しく出会った仲間たちと学生生活を謳歌し、「関西外大で一生の仲間と出会うことができた」と話す。最近は、大会で世界に出ていくことも多い。「海外に行くことは何の抵抗もなく、自ら積極的にコミュニケーションを取るようにしている」と言う。その秘訣は、大学時代、関西外大にはたくさん留学生がいて、日常のキャンパスライフがグローバルだったからかも知れない。 事故で右腕を失ったのは、結婚して5日後のこと。生死をさまよい、一命を取り留めたものの、目を覚ますと昨日まであったはずの右手がそこにはなかった。できないことが増えていく日々。そんな中でも妻・亜紀(あき)さんは、落込む顔も見せず、「なんとかなるよ」と強いメンタルと持ち前のポジティブな性格で支えた。入院中、障がいを負ってできることを探していた時「パラリンピックに出れるチャンスがあるな」と二人で話すこともあったと当時を振り返る。周りの人の支えもあり、事故を受け止め、一つひとつ目の前のできることに目を向け、大きな一歩を踏み出した。 「人は、誰か大事な人がいれば原動力となり、どんな壁も乗り越えられる」。トライアスロンの辛い練習に耐えられるのも「家族」がいるからという。学生には「1つでもいいから自分が楽しめること、熱中できる大事なことを見つけて欲しい」とエールを送る。そのためなら辛いことでも楽しみながら頑張ることができる。そして、しんどい時は、笑うこと。笑っていれば、周りにいる人もプラス思考でニコニコした人が多くなる。「人生に起こることは、何とかなることが大半。物事を大きく考えすぎず良い意味で小さく見ることが壁を乗り越える秘訣です」仲間に恵まれた大学時代目の前のことに全力をトライアスロンとの出合い人生の絶望からの転機3. 東京4. 横浜5. スペイン1. 東京 2. スペイン写真1~5はいずれも今年開催された世界大会