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概要

外大通信デジタルブック

英語国際学部 内田 真弓 講師魂を伝える言葉万代池は、大阪市住吉区にある池。周辺は万代池公園として整備されている。本学は1953 年、近くに関西外国語短期大学を開設。草創の地として受け継がれている。うちだ・まゆみ/1998年学習院大学文学部英米文学科卒業。2000年関西外国語大学大学院外国語学研究科英語学専攻博士課程(前期)修了(英語学修士)、2003年同博士課程(後期)単位取得満期退学。ECC外語学院、エース国際法科学院、シー・ティー・エス日米、大阪医専、森ノ宮医療学園専門学校、佛教大学通信教育課程、大阪経済法科大学、大阪キリスト教短期大学、大阪産業大学教養部などの講師を経て2013年から関西外国語大学講師。専門は言語学、教育学。Profile万 代池 みなさんには「座右の銘」あるいは折に触れて思い起こす言葉があるだろうか。私が特に仕事をする上で意識するようにしているのが「正範語録」である。一部、武田信玄の言葉がもとになっているという説もあるが、作者は不詳。よく知られた語録なので、どこかで耳にしたことがあるかもしれない。少々長いので、一部のみ抜粋しよう。 真剣だと知恵が出る/中途半端だと愚痴が出る/いい加減だと言い訳ばかり 自分がやっていることに対して、愚痴をこぼしたり言い訳をしたりするようになってきたら、気が緩み始めたサイン。私にとっては、本気で取り組めているかどうかを自問し、気合いを入れ直すタイミングとなる。 こうした言葉には、人を動かす凄まじい力を感じる。どのような言葉が心に響くかは、個人の体験や環境が複雑に絡み合ってくるため、人によってさまざまだ。ときには過去の思い出と重なり、涙があふれそうになるほど心を揺るがされることもある。私たちが扱っている言葉には、それほど深い意味や思いを込めることができるのだ。 しかし、外国語を勉強していると、得てして日本語をおろそかにしがちである。資格試験で高得点を目指すことも大切であり、文法や語彙を暗記することも不可避であるが、ときには言葉本来の目的にも目を向けてほしい。翻訳の授業を担当していると、英語を日本語に置き換えてなんとなく意味がわかればよし、としてしまう学生が多いように感じる。 だが、その作業はAIにも可能だ。これからの時代、外国語を使って生き延びていくには、AIを超える力を武器にしなければならない。言葉にこうした魂を入れられるのは人間だけであり、言葉に込められた深みや情緒を読み取れるのも人間だけであろう。外大生だからこそ、言葉を単なる道具としてではなく、他人や後世に魂を伝えられるような言葉の使い手になってもらいたい。The G a idai 関西外大通信 No.303 Autumn, 2020 2020年11月30日発行 発行:関西外国語大学 〒573-1001 大阪府枚方市中宮東之町16-1 https://www.kansaigaidai.ac.jp/