海外生活体験記(6)ワールドイングリッシーズ--藤田由美子

2010/8/9

 

 

学生のころ、私は日本とアメリカで英語を学びました。そのころの私は、いわゆる「アメリカ英語」というものを話していたと思いますし、特に意味はないけれども、勉強するならばアメリカで使われている英語を学ぶべきだと感じていたし、実際、学校の先生も「アメリカ英語」を教えていたと思います。アメリカ留学中、私は一度ロンドンを訪れました。イギリスの人と話しているときに、「アメリカでは何を勉強しているのか?」と質問を受け、私は「英語を勉強しています」とそのまま答えました。すると、みんな大笑いして「英語をアメリカで勉強???」というコメントです。「アメリカでは英語じゃなくて米語をしゃべっているんだよ~。」すごい衝撃。そのころの私は、英語と米語の違いどころか イギリス人がアメリカ人をどう思っているか(又その反対も)なんて考えたことすらなかったのです。

トマトスープを注文した時、「’トメイトゥ’スープ」と言っても理解してもらえず、「ああ、’トマート’スープ」が欲しいのか、と言い返されました。どっちだって、ホントは判っているはずなのに、ちょっとアメリカ英語を話す人間に対して皮肉だなあ、と感じたことを覚えています。

欧州系の航空会社に勤めてから、ある日客室乗務員のトレーニングで、乗務員役として模擬練習をした時、お客様役の同僚から「ビールを」と頼まれ、「Sure, sir」と答えたら、

あらまあ、ビックリ。私の英語がLowだと採点されました。「Sure」はお客様相手にはカジュアルすぎる、「Certainly」や「Of course」を使うようにと。

アメリカの航空会社に搭乗したときには、「Sure」なんて何度も言われているし、それこそ「OK~」なんて受け答えをする乗務員さえいたと思うのだけど・・・。

でもこれは、「いい・悪い」の問題でなく、「適した表現、TPOに合っている」かのことだと思う。私的な場所では、どんな英語(どちらの英語)を使おうが好きだろうが嫌いだろうが個人の自由だけれども、一旦「仕事」となると、そこで望まれる英語を使うことは、仕事の職務の一部なのだと思う。

そして、シングリッシュ。

これは、正直 いわゆる私たち日本人が慣れ親しんでいる「英語」とはちょっと違った感じの英語。逆に、よく耳にしていた「英語」に精通している人には理解するのに困難を感じるかも知れない位。

ただ、そんなシングリッシュのことを人は、特に「英語」をまだ身につけていない人は、よく、「そんな英語って、ちゃんとした英語じゃないでしょ。そんな英語、身につけたくないなあ。」と言います。

でも、「ちゃんとした英語」ってどんな英語?

イギリス人やアメリカ人の話す英語がちゃんとした英語?言葉はコミュニケーション手段の一つ、自分の存在する場所の大半の人が使っているのなら、それを話せなくても、少なくとも理解できなければ何も進まない。

Let’s go marketing. これはGo shoppingと同じ意味だけど、特に市場やスーパーに行くときに使います。

I want this, can? 英語を学んだことのある日本人ならば、May I have this?と言うところだと思います。初めは「何か、ちょっと無礼な感じ~」と思うかも知れないけれど、これが、段々慣れてくるから不思議。

Let’s makan. Makanとはマレー語で「食べる」。だから、「ごはん、行こう!」ってこと。こんな風に英語と現地語を交ぜることは常で、このフレーズは、ホントに日常会話としてどこででも耳にします。

今、世の中で、「アジア」に注目が集まっていることは、よく知られていることです。

これからは、こんなアジアンな英語を含め「多様化した英語」に拒絶反応を起こさない、何とかやっていける力も、どんどん求められてくることでしょう。

色々な英語にさらされる経験を重ねてそういった英語力も高めていくことは、次世代人として、益々必要になってくるのではないかと思います。