関西外大には毎年数多くの外国人留学生が来ており(2022年度実績で約960人)、本学で開講している留学生別科の授業と並行して、インターンシップなどにも取り組んでいます。
その一翼をになっているのが海外留学生グローバルインターンシップ(KGIP=KANSAI GAIDAI INTERNSHIP PROGRAM)です。
一方で、同制度を利用せず、独自ルートで自らの興味・関心のある仕事の現場に飛び込む留学生も少なくありません。
今回は、その事例のご紹介として、京都府 商工労働観光部 ものづくり振興課でインターンシップを行ったプラニッシュ・マディシェッティさんのインタビューをお届けします!
留学生プロフィール

留学生プロフィール
- お名前:Pranith Madishetti (プラニッシュ・マディシェッティ)さん 愛称:プリウスくん
- 出身地/大学:アメリカ合衆国出身 Otterbein University (オタバイン大学)
- インターンシップ先:京都府 商工労働観光部 ものづくり振興課
- インターンシップ期間:7/3~9/22(週5日)
京都府 商工労働観光部 ものづくり振興課でインターンシップ

原籍大学では心理学とグローバル・スタディーズ(主に東アジアの歴史と文化)を専攻。関西外大には交換留学生として留学生別科に1年間在籍し、日本語と経営学、そして日本の歴史について学んだプリウス君。
「日本のビジネス習慣を理解するために、歴史的背景も知りたい」と思ったことが歴史を学んだ理由だが、その流れで「日本の文化的なものがビジネスとしてどのように世界に発信されているのか」に興味を持ち、行政機関でのインターンシップを志望した。
――関西外大のグローバルインターンシップでも受け入れ先を探しましたか?

もちろんです。ただ、企業が中心で行政機関がありませんでした。もっというと、インターンに参加した京都府庁もインターンシップ実習生の募集は、基本的には日本国籍の学生を対象とするものでした。
――どうやってインターンシップ参加されたんですか。

登録していたCRCC Asia※の紹介で、京都府 商工労働観光部 ものづくり振興課に受け入れていただくことが決まりました。
約3カ月間のインターンシップに参加し、以下で具体的に取り組んだ代表的な活動を紹介する。
インディーゲームの祭典「BitSummit」で通訳などを担当

2023年の6月末からインターンがスタートし、最初に大きなイベントに立ち会ったのがインディーゲームの祭典「BitSummit」だ。
今回(2023年)のBitSummitには、約2万4千人が参加。
会場は世界各国から関係者やファンが集まり、イベントは年々大きく発展していっている。
同イベントは、
- ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- 任天堂
- 日本マイクロソフト
- Valve Corporation
をはじめとする多くの企業が支援し、ゲーム開発者による作品展示や講演などが行われる。

――2023年は、7月14日、15日、16日に「みやこめっせ」(京都市勧業館)で開催されました。

京都で開催され、京都府も主催者の一つとしてイベントの運営を担っており、インターン生として入職間もない私も参加させてもらいました。
――具体的に、現場ではどういったことを担当されたのですか?

受付のときをはじめ、会場での通訳を主に担当しました。外国からの来場者も多かったので重宝され、けっこう忙しかったです(笑)。
――その他、印象に残っていることは?

出展されたゲームを私も体験させてもらいました。周りの職員の人から「めっちゃ上手い」と褒められました(笑)。
「食の世界便」関連のイベントをサポート

世界を見据えた商品開発(ヴィーガン食品・料理など)、ウィズ・アフターコロナ時代のインバウンド対応、円安・人口減少時代の輸出対応を応援する「京都 食の世界便」。
具体的な取り組みとして、商品を輸出する際に役立つ情報を紹介するセミナーなどを定期的に開催している。
プリウス君は、海外向けにアレンジされた日本の食材の試食会において、イベントのサポートなどを務めた。
――イベントの概要について教えてください。

京都の大学に通う留学生をはじめとする京都在住外国人と、京都の食品企業に集まっていただき、「試食交流会・SNSなどへの撮影発信会」を開催。当日はアメリカを中心に、メキシコ、香港など約20人の外国人が集まり、ここでも主に通訳の仕事を請け負いました。
――「試食交流会」ということで、食品企業が提案する商品やレシピを外国人の方が試食されたわけですね。

はい。試食して食品を評価し、その感想を企業の方が持ち帰り、今後の商品開発などに活かしてもらうという取り組みです。例えば、ハラルなどの宗教食、ヴィーガンなどは日本ではそれほど認知されていないので、そうした視点を指摘したり、味付けの好みを伝えたりしました。
――参加してみて、プリウスくん自身が気づきを得られたことはありましたか?

企業の方が、海外ユーザー向けの決済方法をレクチャーしている現場に参加しました。そうした決済サービスがあることを知らなかったので驚くとともに、テクノロジーの進化が、日本の商品をより世界に発信しやすくしているんだなと感じました。
京都の大学の魅力を世界に発信

ものづくり振興課での仕事にある程度慣れてきた以降は、プリウス君自身からいろいろな企画を提案するようになった。
例えば、ご自身と同じように京都の企業でインターンシップを行っている外国人の方にヒアリングをして記事にまとめたり、海外から京都の大学へ留学を考えている学生に向けた記事コンテンツを制作したり、積極的に企画を立案し、OKが出た後にそれを実践に移した。
後者の取り組みでは、
- 京都大学
- 立命館大学
の2大学を対象とし、それぞれの大学で学んでいる留学生や広報担当者などに取材を行い、記事にまとめた(※後日、京都府ものづくり振興課ホームページに掲載予定)。
――主にどういったことを質問されたんですか?

外国人留学生が知りたい情報が中心です。例えば、奨学金のことや住居、授業内容、英語での対応など、それぞれのサポートがどのように行われているかを伺いました。
――記事の言語は英語ですか?

はい。海外にいる留学生に向けて京都の大学の魅力を発信するのが目的ですので、英語で記事を書きました。
準備期間には、自分で各大学のプログラムなどを調べ、質問事項を考えて、取材に臨みました。
――留学生が気になる大学の支援体制を中心に質問をしたということでしたが、関西外大のサポートはいかがでした?

関西外大のASP(ASIAN STUDIES PROGRAM)も英語の授業が充実していて、特にビジネス関連の授業は楽しかったです。日本語の授業もよかったですね。
住むところはグローバルコモンズ結※とセミナーハウスがあって、すごく快適でした。
※「GLOBAL COMMONS 結 -YUI- 」は外国人留学生と関西外大生が共同生活を送る教育施設。詳細については以下の記事をご参照ください。
アンテナを張り、自発的に行動する姿勢が心強かった(担当者コメント)

京都府 商工労働観光部ものづくり振興課 水口 宏城 特区・イノベーション係長コメント
当課では、公務員志望の日本人学生を受け入れたことはありましたが、留学生の方のインターンシップ受け入れは今回が初めて。言葉が通じるのかなど、私たちも当初は不安がありましたが、プリウス君は日本語がとても上手で、日本語でのレポートも完成度が高くいい意味で期待を裏切られました。
イベントなどでは通訳として大活躍してくれ、各職員が頼りにしていました。京都の大学の取材記事をはじめ、英語で京都の魅力を発信してくれる取り組みは、留学生ならではの視点で興味深いものでした。
また常にアンテナを張り、自発的に行動してくれるのも心強かったですね。例えば、ドバイに京都の特産品などを出展するプロジェクトを進めるとなった際、こちらからの指示がなくても、自発的にドバイのビジネスマナーや宗教的にNGとされる日常的な所作などをまとめ、日本語でレポートを作成してくれました。
留学生の受け入れ実績はありませんでしたが、今回のプリウス君の活躍を受け、今後の受け入れも前向きに検討したいと考えています。
さいごに
2023年9月22日に京都府 商工労働観光部 ものづくり振興課でインターンシップを終え、翌週にはアメリカに帰国したプリウス君。
スイスにある国連機関のインターンシップに応募しており、採用されれば2024年3月から当地でのインターンに参加する予定で、その後は大学院に進んで経営学を専攻し、MBA(経営学修士)を取るのが目標だという。
――将来は国連で働きたい?

その通りです。だから、今回のインターンシップ先も一般企業ではなく、行政機関がよかった感じで。京都府庁で、さまざまな行政の取り組みを体験できたのは、私にとって貴重な経験となりました。
――今回のインターンシップで、一番成長したと思う点は?

日本語の敬語ですかね。敬語は全然できなかったから。あとは、名刺の渡し方とか、日本のビジネスマナーを学べたのもよかったです。
――最後に、日本の好きなところをお願いします。

日本の方は皆さんとても優しい! あと、お店の顧客サービスはどこもレベルが高く、すばらしいと思いました。
もし機会があれば、仕事などでまた日本に戻ってきたいですね。