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国際金融の経験をもとに語る。
これからの時代で通用する
グローバル社会を生きるヒントとは

国際金融の経験をもとに語る。これからの時代で通用するグローバル社会を生きるヒントとは

世界への好奇心を持つ
多様な価値観と向き合う
他者に貢献する

みなさん、こんにちは。Take Action!編集部です。今回登場いただくのは、金融庁監督局や三菱UFJフィナンシャルグループなど、国際金融の世界で活躍されてきた出水先生です。グローバル社会におけるリベラルアーツの価値と、若い世代が学ぶ楽しさと好奇心を育むことの重要性、そして社会に出る前に取り組んでおくべきことについて語っていただきました。

金融界のフロントラインから教育の現場へ

私は2023年秋から関西外大で、国際関係研究の講義を担当しています。それまでの約4年間は、金融庁で勤務しており、金融機関の適正なビジネス運営の監視や地方創生に関わる業務を担っていました。

私が金融行政の世界に足を踏み入れたのは、国として健全な金融システムを維持する必要があると思い、自分の経験がそのために役立つと考えたからです。金融庁での4年間は、新しいスタンダードを創り上げるなど、多くの達成感を感じることができました。しかし、その後の人生で国の発展に更に貢献したいという思いが強くなり、金融機関だけでなく、より大きな仕組み作りに携わる道を選びました。

大学教員への転身を考えたのは、金融機関が経済の主役ではなく、新しいビジネスを創出するのはこれからの世代であるという認識があったからです。若い人たちが元気にビジネスを展開できるような仕組みを作ることが、社会に対する大きな貢献になると考えました。自分のこれまでの経験が、学生たちにとって何かの役に立つのではないかと思い、教育の世界に身を投じることを決意しました。

リベラルアーツは、ビジネスの現場で生きる力になる

これまでの経験を振り返って思うことは、リベラルアーツの教育がいかに重要かということです。特に、国際舞台におけるビジネスの交渉や対話において、広範な知識と教養は欠かせない要素となります。

私が日本の代表としてさまざまな国際会議に参加してきた経験から言えることは、交渉相手の心を開くためには、ただ単に専門的な知識や技術を駆使するだけでは不十分です。文化、芸術、哲学、歴史、地理といった幅広い知識が、相手との心の橋を架けるためには必要です。これらの知識を瞬時に引き出し、相手の心をつかむことができる能力を持っていることが、交渉の場での成功には不可欠です。

金融の世界で長年働いてきた私が、特にリベラルアーツの価値を感じたある会議でのエピソードを1つご紹介します。金融とITの問題について話し合う国際会議に、私は日本の代表として参加しました。この会議で、私はイギリスの代表との間で意見の相違がありました。休憩時間に偶然コーヒーを飲みながら話す機会があり、私が高校時代にゲームを作った経験があることを共有したところ、意外にも彼も同じような経験があったのです。その共通の話題で盛り上がり、その後の会議では彼が私の意見をサポートしてくれるようになりました。

仕事上の技能や専門知識だけでなく、リベラルアーツを通じて培った広範な知識と教養が、相手との深い関係を築き、時には大きな意見の相違を乗り越えるための鍵になることを私はこの経験を通じて学びました。リベラルアーツは、グローバルに通用する教養。国際社会を生きる人に欠かせないものだと考えています。

学ぶ楽しさと好奇心を若いうちから育む

私が関西外大でめざしていることは、単に知識や経験を伝えることではありません。現代は情報が溢れる時代。必要な知識はインターネットで簡単に手に入ります。そこで大切にしたいのは、学問に対する好奇心や学ぶ楽しさを学生たちに伝えることです。関西外大は、グローバル化の時代に対応できる人材を育てることに特に力を入れています。しかし、そのためには学生たちがもっと積極的に異なる価値観や文化を受け入れ、好奇心を持って学ぶ必要があります。

私が感じる日本の若者の課題は、自分の意見を持つこと、異なる意見に対して声を上げることが少ないという点です。これはグローバル社会で活躍するためには不可欠な要素です。特に海外経験を持つ人は、さまざまな文化や価値観にふれ、好奇心が刺激されることで、自身の視野を広げています。この経験をもっと多くの学生が持つことができれば、彼らの教養力やグローバルな視野は広がることでしょう。

知識を超えた学びを追求する場がある

教育とは、ただ知識を伝えることではなく、学生自身が「なぜ?」と疑問を持ち、その答えを求める過程にあると私は考えています。たとえば、私が金融経済学を教える際に、ただ教科書の内容を一方的に説明するのではなく、学生に実生活に直結するような課題を出しています。

その一例が、「将来自分が受け取る年金の手取り額を計算させる」というものです。これは、単に計算能力を試すだけではなく、社会保険や税金など、彼らが将来直面する現実を考慮させる課題です。この講義では、ChatGPTやAIのような最新技術を取り入れながらも、それらに頼り切らずに、学生自身が実際に手を動かし、考えることを重視しています。年金計算の課題では、単に答えを出すのではなく、その過程で彼らがどのような生活を送りたいのか、また、将来の社会保障や税制について考えさせることが目的です。このようにして、彼らが自分の未来について深く考え、さらにはその情報をどのようにして得るかを自ら考えさせます。

このプロセスは、学生にとって、自らが何に興味を持ち、何を学びたいのかを自問自答する良い機会となります。教養とは、特定の知識だけでなく、好奇心から得られるものであり、それを追求することが重要だと私は伝えています。

グローバルに活躍するために、今から実践できる3つの習慣

この記事を読んでいる人のなかには、将来グローバルな環境で活躍することをめざしている人も多いと思います。そこで、私のこれまでの経験をもとに、今から取り組める3つの習慣・考え方についてご紹介します。

1.新聞を読む

1つ目は、新聞を紙で読むことです。たとえ3カ月だけでもいいので新聞を取って実際に手に取り、読むことの価値を感じてほしいです。紙の新聞を通じて、どのようなニュースが強調されているか、その迫力を直接感じることができます。この習慣は、情報の取り扱い方に対する新しい視点を得ることにつながります。

2.宗教を学ぶ

2つ目は、宗教について学ぶことをお勧めします。宗教を学問として捉え、その社会への影響を理解することは、新たな発見に満ちています。宗教が異なる文化や社会にどのように根ざしているかを学ぶことで、世界に対する深い理解と洞察を得ることができます。これは、異なる視点から物事を見る力を養うことにもつながります。

3.いまを生きる

最後に、いまこの瞬間にしかできないことに時間を使うことの大切さを伝えたいです。ネットの情報は後からでも得られますが、いま、目の前にある機会や体験は再びは訪れません。好奇心を満たし、教養を深めるために、いまを大切に生きることが重要です。経験を積むことで、話に深みと説得力が生まれ、人を引き込む力が育まれます。

人生とは、学びと成長の無限の旅

教えることだけではなく、学ぶことの重要性についても私は強く感じています。知らないことへの好奇心は尽きることがありません。人生は限られています。だからこそ、いまできることに全力を尽くし、学び続ける。60歳で人生が折り返すという考え方に縛られることなく、知力と経験は75歳、80歳になっても伸び続けることができます。これは、現代社会の仕組みに対するチャレンジでもあります。

私の学びは、引き出しを増やすことにもつながります。増えた引き出しは、学生たちへの教えにも生かされ、共感する学生が増えれば、彼らが将来、日本のビジネス界に大きく貢献してくれるでしょう。

※この記事の内容は取材時点(2024年3月)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。