大学院が開設から50年を迎えました/重要性増す「外国学」の探求/「学部の学びの、その先へ」を実践する

 関西外国語大学大学院が50年を迎えました。

 大学院外国語学研究科英語学専攻修士課程は1973年4月に開設されました。英語学専攻の大学院は当時、国公私立で全国に4校しかありませんでした。この年、1期生として9人が入学しました。


▲2023年3月に開かれた大学院入試説明会

 大学院設置に先駆けて1972年に国際文化研究所を開設し、1979年には外国語大学で初めての博士課程が設けられ、〝外国学〟と〝国際学〟の教学体制が確立されました。

 時代の移り変わりとともに、カリキュラムの改編や刷新が重ねられ、2022年からは博士前期課程の教育課程が「英語学コース」「英語教育コース」「イベロアメリカ文化コース」「日本語学・日本語教育コース」「国際共生コミュニケーションコース」の5コース制になっています。


▲2023年3月に開かれた修士論文の公開発表

 大学院の修了者は2023年3月末現在で、博士前期課程と博士後期課程を合わせて880人。博士号取得者は82人(課程博士75人、論文博士7人)で、その多くが大学教員として活躍しています。


 益岡隆志・大学院外国語学研究科長に大学院の役割や魅力について聞きました。



 ――大学院の半世紀の歩みをどう評価しますか?

 1973年の大学院の開設は、関西外大が当初から掲げた「外国学」の追究、国際交流の推進という目標に沿ったものだと考えています。

 4年制大学の開設から時を置かず、7年後に大学院修士課程を設置し、その6年後の79年には外国語大学として初となる博士課程を設置しました。博士課程の設置は当時としては画期的なものでした。また、英語学専攻に続いて設置した言語文化専攻も先進的な試みといえます。

 ――グローバル化が進化する中、大学院の役割は?

 グローバル化の時代にあって、「外国学」の追究は重要性を増しています。昨年度、前期課程のカリキュラムを5コース制に改編しました。学部のほうでも、国際共生学部が新設され、来年度には国際 日本学科が開設されますが、いずれも大学院との連携にとって 重要な意味を持つものです。

 さらに、学部でゼミ科目が整備されることから、学部教育と大学院教育の接続を強め、入試説明会や広報活動を通じて学部生の大学院進学を促したいと考えています。

 ――長期的な方向性は?

 社会と世界により開かれた大学院を目指します。国際共生コミュニケーションコースでは今年からインターンシップを始めます。継続実施中の英語教員対象の夏期リフレッシャーコースのような取り組みを通じ、社会貢献を強めていきます。

 AI(人工知能)の時代にあって、大学院生の皆さんは「自ら問う力、解決する力」がこれまで以上に求められます。知的好奇心、探究心が重要です。また、学部生の皆さんには、「学部の学びの、その先」に大学院という次なる飛躍の場が開かれていることを知っていただきたいと思います。


 2021年博士後期課程言語文化専攻修了で現在、外国語学部助教を務める村松擁さんに聞きました。



 ■院生研究会の論集発行/貴重な論文発表の場

 近畿大学法学部出身ですが、2年生のとき、カナダに短期留学したことで語学に目覚め、ゼミは言語学を専攻しました。さらに学びを深めたいと、本学大学院に進学しました。

 前期課程では、いろいろな進路を志す学生がいて刺激を受けました。後期課程では、認知言語学に触れ、「海外旅行に行き、現地のスーパーに入るような」新鮮さを覚えました。

 先生方はその道の大家がそろい、雲の上の存在でしたが、話してみると気さくで、距離が近い関係が築かれています。

 大学院には学生の集まりである院生研究会があり、私は後期課程で会長を務めました。会が担当する論集の発行は、大学院生にとり、修士論文や博士論文の作成過程で、その一部を公開する貴重な発表の場となっています。

 現在は、教える立場ですが、学生には、教える内容が楽しいことだと分かってもらえるように努めています。英語について少しでも「引っかかる」と感じる方には大学院進学をお勧めします。


 博士前期課程言語文化専攻日本語学・日本語教育コース2年の前田真由さんに聞きました。



 ■同級生、先輩との交流で充実した時間

 日本語学に興味があり、学部で日本語教育課程を履修しました。教育実習をした際に力不足を感じ、学びを深めたいと大学院への進学を決めました。

 大学院1年目は、授業や研究のほか、同級生や先輩と食事したり、旅行したりと充実した時間を過ごし、進学してよかったと思っています。

 毎日の生活は、朝、大学に来て、授業に出たり、調べものをしたりして、夕方まで研究室で過ごしています。研究に充てるのは1日約5時間。修士論文は、指示代名詞「あれ」と言語習得をテーマにする予定です。秋の公開発表に向け、多くの先行研究に目を通し、アンケートを実施しようと考えています。

 前期課程修了後は、アメリカに日本語インターン留学をし、帰国後に博士後期課程に進みたいと思います。大学院は好きな事柄について専門性や知識を深めたい人にはいい環境です。ぜひ挑戦してください。





 
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