現代中国研究センターからのニュース
関西外国語大学孔子学院5周年記念特別講演「井上靖と中国」を開催
2014/10/31
10月30日(金)、関西外国語大学中宮キャンパスのインターナショナル・コミュニケーション・センター(ICC)4階ホールで関西外国語大学孔子学院設立5周年を記念して、特別講演「井上靖と中国」を開催しました。井上靖氏の長男で井上靖記念文化財団理事長の井上修一筑波大学名誉教授をお招きし、「西域物語」や「孔子」など中国をテーマにした作品を数多く著している井上靖氏と中国のかかわりについて語っていただきました。
井上修一先生は、最初に複雑な家庭環境が作家として井上靖が成功するための大きな要素であったと語り、家系図を紹介しながら井上靖の生い立ちについて説明されました。「その生い立ちゆえに見果てぬ大地や叶わぬ夢への憧れが強くなり、中国新疆ウイグル自治区以西の地域である「西域」への思いが強くなっていったのではないか」と紹介。中国で井上靖が広く認識されるきっかけとなった作品「敦煌」は、中国人にとって単に迷惑な存在でしかなかった砂漠をテーマとしただけでなく、そこにロマンを見出したことが中国人にとって大きな驚きであり発見であったとの話には、講演に訪れた市民や学生らが熱心にメモを取っていました。
また、文豪・井上靖ではなく、息子から見た父・井上靖、人間・井上靖としてのエピソードもお話しいただきました。大学進学について相談したとき、「会社で得ることができる肩書はたかだか20年ぐらいしか使えない。しかし、大卒の肩書はその後50年は使える」と東京大学進学を勧められたことや、新聞社勤務時代の俸給表の写真を使い、給料の前借をしていたことなどもユーモアを交えながら紹介されました。
講演最後の質疑応答の時間は、予定の時刻を過ぎても質問が出るなど熱気あふれるものとなり、井上修一先生にはそれぞれの質問に丁寧に答えていただきました。今回の講演では、日本と中国を文学作品で結ぶ井上靖氏の功績に改めて触れることができました。参加者の皆さんにとって、たいへん有意義で実りの多い時間になりました。