中国語教員養成センターからのニュース

 

日本の学生がおかす誤用の深層を探る―「第6回西日本地区漢語教師培訓講座」を実施

2010/10/24

 

 

言語の形式は、その民族が外部世界を捉える際の認知法を反映し、話す人間の目的によって表現の方法が選択されます。頭で考えてなされる言葉、行いに規定される言葉。今月24日に行われた関西外大孔子学院第6回培訓講座では、こういった言語の認知・語用の特徴を重視する研究の成果が、十分に反映されていました。

今回は、午前は神戸市外国語大学・任鷹教授が「母国語の“負の遷移”が第二言語学習に与える影響」、午後は大阪大学・金昌吉教授が「漢語語法教学」、というテーマで講座を担当しました。両先生は語法研究で著名な方々であると同時に、長年日本人に対する漢語教育にも携わってこられた教師でもあるので、お二人の講座には多くの共通点が見られました。

両先生は膨大な量の日本の学生の誤用例を収集・持参され、それが当講座で展開された議論の精確な論拠となっていました。特に金昌吉先生が提示したサンプルは、典型的な誤用例が量もさることながら系統立てて分類されており、それだけでも十分に参考に値するものでした。お二人の分析は非常にきめ細かく厳密であり、語用例の成因を認知・語用の面から分析するという方法論をとっていました。つまり日本語と漢語の認知上の差異を比較するのですが、例えば任鷹教授は中日の受動文を分析し、日本語では間接受動文が多用されるが、漢語では直接受動文が多用されると指摘しました。その理由として日本語は心理的な感覚を重視するのに対し、漢語は物理的な作用を重視する事を挙げました。また金昌吉教授は一般に複数を表わすと見られている“們”が、実は不定量の“群” 表示していると指摘し、なぜ“們”が数量を表わす語と共に用いる事が出来ないのかについて、明快な解釈を加えました。

この講座は、20数名の参加者にとって非常に興味深いもので、「腑に落ちた」「役に立ちそう」といった率直な感想を持ったようでした。誤用の分析を基礎として、認知・語用の面からアプローチする方法、教学の実践に立脚した研究態度。これこそが今回の講義が実りの多いものとなった理由であると言えます。

 
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