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国際的なキャリアをめざすために、
10代から取り組みたい意識改革とは

国際的なキャリアをめざすために、10代から取り組みたい意識改革とは

何でも挑戦してみる
自らチャンスを作り出す
多様な価値観と向き合う

みなさん、こんにちは。Take Action!編集部です。今回登場いただくのは、在米日本大使館や国連開発計画の事務所に勤務していた、福田先生です。国際経験豊富な福田先生から国際社会で求められている考え方やスキルなどグローバル人材をめざすためのアドバイスと関西外大の魅力について語ってもらいました。

途上国の「国づくり」に見出した、大きなやりがい

私は比較憲法や国際人権法の専門家として、2023年秋から関西外大で教えています。高校卒業後にアメリカの大学へ進学して以来、海外で学びキャリアを積んできた私にとって、日本での生活は約25年ぶりとなります。

米パデュー大学で修士号を取得した後、在米日本大使館や、国連開発計画(UNDP)のモンテネグロ事務所、ラオス事務所に勤務しました。その後、米インディアナ大学ロースクールで博士課程を修了し、現在に至ります。皆さんの中には、国際的なキャリアに関心がある方が多いと思いますので、まずUNDPでの私の経験についてお話ししましょう。

UNDPでは、民主的ガバナンスという枠組みで、途上国の法整備支援と議会支援を担当しました。わかりやすく言うと、「国づくり」の支援です。途上国では、国の基盤が整っていないことが多いので、国内のルール作りだったり、批准する国際条約を国内に適用する作業だったり、基本的人権が適切に保護されていない場合には、それをいかに強化していくか、というサポートも行いました。

「国づくり」のような大きな事業に関わり、一緒に仕事をさせていただけるのは、国際機関で働く醍醐味だと思います。UNDPで働き始めた当時、私はまだ20代後半でしたが、大臣クラスの方々と普通に打ち合わせができました。また、ラオスでは刑法典の起草など、国として初となるプロジェクトに携わることができ、大きなやりがいにつながりました。

一方で、「国づくり」の支援には、その効果が見えにくいという難しさもあります。例えば、私が関わった法案が国会で可決されたからといって、人々の生活が劇的に変わるわけではありません。そういう意味で、「本当に助けになっているだろうか」と考えることもありました。しかし、「人の為になっている」という思いが根本にあると、仕事の姿勢だけでなく、日々の生活の仕方にも違いが出てくるものです。ラオスでも、モンテネグロでも、その国にいる間は常に、「何か私にできることはないだろうか」という観点から、いろいろなものを見ていた気がします。

自分で考え、解決策を見つけ、実践する力を育てたい

私が担当する「Foundation for Global Engagement」では、憲法デザインと呼ばれる新しい分野について学び、さまざまな国の成功例や失敗例を取り上げながら、社会がうまく機能していない国でどのような憲法をデザインしていけるか、考えていきます。そのほか、SDGs(持続可能な開発目標)を扱うクラスも担当します。そもそも「持続可能な開発とは何か」というところから始め、貧困、教育、気候変動などの課題を含む、17の目標からいくつかをピックアップし、学生の気づきにつなげていきます。どちらの科目も、授業はすべて英語です。

私は実務家として働いてきたので、授業を行う上でも〝机上の空論″にとどめたくない、学生たちにもそこでとどまってほしくないと考えています。授業では学術文献も読みますが、そこにとどまらず、自分で考えていく力、解決策を見つけ出す力、さらに実践していく力も養います。また、アメリカの学生に比べて、日本の学生は自分から発信する力がやや弱いと感じるので、プレゼンテーションやディスカッションなど、意見を述べる機会を多く提供していきたいと思っています。

一人ひとりの意識の変化が、世界レベルの変化につながる

学生たちに教えていると、私にとっても新しい発見があります。例えばSDGsの授業では、複数の学生から、今まで「SDGs=環境」というイメージを持っていたと言われました。授業を通じて、環境分野はあくまでもSDGsの一部であり、すべてではない、と気づいてくれたようです。また、貧困や飢餓、不平等など、すべての課題に教育が関わっているのではないか、と考え始めた学生も多くいました。

学期末に、多くの学生の意識に変化が見られたのも非常に嬉しいことでした。SDGsの授業をふまえ、日々の生活のいたるところで持続可能性を意識するようになったそうです。例えば、スーパーで買い物をするときも、これは本当に必要だろうか、消費できるだろうか、と考えて買うようになった学生もいれば、電車やバス、自動車に乗るときに、二酸化炭素の排出を意識し始めた学生もいました。

SDGsは世界レベルで打ち出された目標ですが、実際には、国家、地域、個人レベルで取り組まなければ実現できません。一人ひとりが意識を変えていかなければ、世界レベルでの変化は起こせないのです。

国際共生で重要なのは、自分の常識にとらわれないこと

関西外大では、グローバルエンゲージメント(国際共生)をめざす新しい学部として、2023年4月に国際共生学部が開設されました。文化や言語が異なる人たちと協働し、グローバルな課題解決をめざすためには、どのようなマインドセットや資質が必要なのでしょうか。

まず重要なのは、自分の常識にとらわれないことだと思います。人間はどうしても、自分が知っている基準から人や物事を見てしまうものですが、その基準がすべてではない、と意識することが大事です。自分の基準に合わない人や出来事に遭遇したとき、多くの人は「何か変だな」とネガティブに受け止めるでしょう。しかし、それは「変」ではなく、「違い」なのだと気づくことが、国際共生につながります。

また、私が思う日本人の素晴らしい特徴は、コーディネーション(調整)能力の高さです。例えば、15人くらいが出席する会議があったとします。概して、他の国の人々は、最終結論に重きを置くのではなく、まず自分の意見を主張しあう形で議論を進めていく傾向があるように思えます。しかし、日本人は「空気を読む」ことができ、自分の意見を主張しつつも、他の出席者たちをどうまとめていくか、という働きができます。これは世界的に見ても稀有な資質です。国際共生を目指す上で、日本人が自らの特徴を最大限に生かせる点ではないかと思います。

国際共生をめざすために心がけたい、3つのアドバイス

それでは皆さんに、高校時代から心がけてほしい3つのアドバイスを送りたいと思います。

1.国際共生は自分の住む街にもある

グローバルな課題に関心を持ち、世界で仕事がしたいと思う気持ちは大事ですが、国際共生の機会は、実は自分の住む街のいたるところに存在します。例えばSDGsにしても、世界で取り組むだけではなく、市区町村や個人レベルでの取り組みもあります。つまり、私たちはすでに国際共生社会に住んでいるのです。その意識を高校時代から養い、そのうえで自分に何ができるのか、考えてみてください。

2.考え方が異なる人々と積極的に交流を!

短期間でもいいので、一度は海外に行ってほしいと思います。しかし国内でも、インターナショナルスクール等が開催するサマースクールやウィンタースクールに参加するなど、異文化に触れる方法はいろいろあります。高校生のうちから、自分とは考え方が異なる人々と積極的に交流してみてください。異なる考え方に賛成する必要はありません。さまざまな考え方があると知ることが、人生の糧になります。

3.自分がやりたいことを、とことん突き詰めよう

私はよく、「国連で働くにはどうしたらいいですか?」と質問されます。しかし、オリンピック選手も同じだと思いますが、彼らはオリンピックに出場するために、自分がやりたい競技を見つけたわけではありません。「これだ!」と思う競技が先にあり、それに打ち込んだ延長線上にオリンピック出場があるのです。ですから、漠然と国際機関やグローバルを目指す前に、自分がやりたいことを、10代からとことん突き詰めてほしいと思います。途中でやりたいことが変わっても構いません。まずは自分が好きなものを見つけ、それに没頭してみましょう。

関西外大は、国際的な扉が常に開かれた「宝石箱」

私は関西外大のキャンパスを、「宝石箱」みたいだと思っています。自分から積極的に行動を起こせば、国際的な環境を日々作れる状況がすでにそこにある、というのは大きな強みです。

例えば、私の研究室がある国際交流センターの学生ラウンジには、常にさまざまな国からの留学生が集まっています。その輪に勇気を振り絞って入っていく日本人学生もたくさんいます。そこでの交流からは、授業とは違った学びが得られるはずです。

また、関西外大には、国際機関での実務経験が豊富な先生方が何人もいて、その経験を生かした授業が展開されています。留学制度も充実しており、海外協定大学の数は55カ国・地域の395校。これほどまでに国際的な扉が常に開かれている大学は、世界でも数少ないと思います。この「宝石箱」の存在を、皆さんにもっと知ってもらいたいと思っています。