こんにちは、Take Action!編集部です。この記事では2022年に関西外大を卒業し、半導体・電子部品でグローバルな展開をしているローム株式会社に勤務している伊藤翼さんをご紹介します。関西外大では英語キャリア学科で学び、留学中は主にマーケティングについて学んだ伊藤さん。海外勤務をめざして、日々どのように仕事に取り組んでいるのか伺いました。
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アメリカの現地法人と日本のロームをつなぐ仕事
私は現在、ロームという会社で働いています。ロームは世界中に拠点展開をしているグローバルな企業で、半導体や電子部品を主に扱っているメーカーです。みなさんが普段使っているスマホやパソコンにもロームの製品は使用されています。近年、ニーズが高まっている分野としては電気自動車(EV)があります。つまり、私たちの暮らしに必要不可欠な製品を扱っていると言えます。
私が関西外大を卒業してロームという会社に入ったのは、学生時代に身に付けた英語力を生かして、海外で活躍したいと考えたからです。現在は日本で勤務する海外営業として、海外のお客様と日本のロームをつなぐ仕事をしています。担当しているのはアメリカのシリコンバレーを中心とするSSDやHDなどストレージ関連の企業です。アメリカのロームの現地法人のスタッフとともに仕事をします。たとえば、アメリカの企業が「ロームの部品の製品に組み入れたいが価格の相談をしたい」「ロームがこれまでに作っていない部品を作ってもらっていっしょに新しい製品を作りたい」といった相談に応じ、その課題を解決していきます。
語学力で信頼関係を築いていくというやりがい
私の仕事で大きなやりがいを感じるのは、いっしょに仕事を進めるお客様や仲間たちとの信頼関係が築けたときです。先日もシリコンバレーの取引先から監査にお客様が来られました。監査というのは、取引先に納めてられているロームの製品が品質基準をきちんとクリアしているかどうかをチェックしに来られるのです。今回は2ヵ月ほど前に「監査をお願いします」という打診があり、私と上司で対応しました。先方が来られるまでの間に、たくさんの監査項目をチェックして、それに答えられるように準備を整えます。このとき工場やエンジニアスタッフ、開発部門のスタッフなど関連部署に連絡を取り、チームワークで準備を整えなければなりません。
重要なことは普段から私自身が、スムーズにサポートしてもらえるだけのコネクションを構築できているかどうか。監査依頼が来て慌てるのではなく、普段から信頼関係を築いておくことが必要です。もちろん、それはお客様の側に対しても同様。来日されたお客様と食事をとることも多いのですが、お客様が好きなメニューを把握しておくことも大切です。心地よく楽しい食事をしながら会話できたほうが、絶対に次の仕事に有利に働きます。ロームの営業として、技術的な理解を深めるとともにその技術を育んでいる人たち、そして必要としている人たちと、信頼関係を築いていくことが大切だと考えています。
国によるネゴシエーションの違いも楽しむ
この仕事をしていて難しいと感じるのは、やはり国による文化の違いです。私たちの仕事のなかにはシビアな価格交渉などのネゴシエーションをする力も求められます。国によってはビジネスライクにスマートな交渉を基本とするところもありますし、また別の国は強気な発言で商機を得ようとすることもあります。しかし、文化の違いを恐れているとビジネスを円滑には進められません。
しかし、逆に言えば、文化の違いに直面しているときこそ、私たちの仕事の醍醐味を感じる瞬間かもしれません。確かに国ごとの特徴はありますが、一つの国のなかにもさまざまな人がいます。こちらが勝手なイメージで判断することはできません。文化の違いだけではなく、その国の歴史や現状をしっかり把握したうえで、仕事をしなければと日々思っています。そして、そんなときにいつも思い出すのは、関西外大で学んだ日々なのです。
積極的な挑戦から学んだこと
関西外大での学びのなかでもっとも英語力向上につながったのは、留学先で必要となるアカデミックスキルを身に付ける「Super IESプログラム」です。英語でのレポートの書き方やディスカッション、プレゼンテーションの仕方などをネイティブの先生から学び、飛躍的に英語力が伸びました。入学直後に経験した人生で初めての英語でのプレゼンテーションは散々な結果に終わりました。しかし、その悔しさをバネに何度も経験を積み、2年次の終わりには先生から褒めていただき、それが現在の仕事につながるほど大きな自信になりました。
ほかにも関西外大に来ていたたくさんの留学生たちと交流できたことが、いまの仕事に直結していると思います。授業外でも高校生向けにイベントを企画する学生プロジェクトに参加したり、大学のプロモーション映像の制作に携わらせてもらったり、積極的に目の前にあるチャンスを生かし挑戦していました。さまざまな挑戦のなかで、文化の違う人たちとコミュニケーションするための素地が育まれていたのだと思います。いま、仕事で外国のお客様とやり取りするときにも臆せず話せるのは、あのときの経験が生きているからです。
海外勤務の準備をしながら思い出す学生時代
いま、私は日本にいて、世界と日本のロームをつなぐ仕事をしています。そして、近い将来、海外での勤務を視野に入れながら自分自身のスキルアップを図っているところです。グローバルに活躍したい、という気持ちは学生時代からずっとありました。現在も、日々の仕事の半分以上のコミュニケーションは英語です。海外とのオンライン会議も英語でのコミュニケーションが中心ですし、前述の通り、海外から来られるお客様とのやり取りにもやりがいを感じています。しかし、海外勤務となるとさらに自分自身をしっかりと持たなくてはいけないのだろうと考えています。それは、関西外大に在学中に経験した留学生たちとの思い出深い授業があったからです。
それは、留学生別科という何十カ国もの留学生が関西外大に来て学ぶプログラムをいっしょに受けたことです。マーケティングをテーマとした授業だったのですが、みんながものすごい勢いで自分の意見を述べ合っていました。私はそんな様子に圧倒されました。誰かが意見を言うと、それに対して別の誰かが自分の意見を言う。そんな様子を黙って見ていたのですが、突然、私自身が意見を求められました。雰囲気に圧倒されて、おどおどしていると、周囲から「あなたはどう思うの?」「どうして、そう思うの?」と真っ直ぐに質問されます。そんな状況に最初は驚きました。でも、彼らはみんなしっかりとした目的意識を持って日本に来ているのです。そんな彼らと交流するためには、まず自分の意見をはっきりと持つことが大切なのだ、という当たり前のことに気づかされました。
AIにはできない仕事をしているという自負がある
いまの私の仕事もまず自分の意見をしっかり持つことから始まります。グローバルなビジネスだから当たり前のことかもしれません。けれど、近い将来海外に赴任すれば、日常生活でもそうした価値観のなかでの暮らしが始まります。だからこそ、自分の将来を考えるとき、あの日、みんなから意見を求められたことを思い出すのかもしれません。
これからの時代、AIが人の仕事に取って代わるのではないかと言われていますが、私はあまり心配していません。英語の翻訳だけならAIは得意かもしれませんが、英語をツールとして使い、人と人との信頼関係を構築していく営業という仕事は、私にしかできない仕事だと考えています。そして、関西外大での学びによってもたらされた私の強みだと思っています。
※この記事の内容は取材時点(2024年3月)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。