基礎力をより実践的な形で完成させるために、体験型授業を取り入れています。この授業では、企業・行政・地域と連携のもと、その企業などが実際に抱える課題や問題に対して、学生ならではの主体的な分析やアイデアの展開によって解決を図り提案するものです。全プロセスを担当教員と外部講師(企業講師)が協力して指導、より実践的なビジネスプロセスや実社会、実際の企業を体験することにより就業力を育成します。また、3回生の年間を通じた授業とし、12月からの就職活動に最も適したタイミングで実施して、その効果を最大限に高めています。
当チームのテーマは京阪沿線の新たな魅力を掘り起こし、京阪電車のお客様拡大につなげること。私たちは企業と学生の相互にメリットが生まれるような解決策を目指して取り組みました。第一ステップでは枚方市駅周辺の本学下宿生を対象に調査を実施。沿線スポットの認知度や出かける頻度などを調べたところ「良いところを知らない、行き方が分からない」といった問題点が見えてきました。
解決策として、私たちは枚方市駅から一番近い「宇治・伏見」に着目。学生向けのお薦めポイントを自分たちの目で確かめ作成した観光パンフレットを提案しました。また沿線の他大学に働きかけ、より多くのファン作りにつなげる「京阪沿線大学サミット」も提案しました。
国際言語学部 安原 芹香さん
私はPBLに入って本当に良かったと感じています。1点目の理由は、座学の授業では体験できない大きな取り組みに参加できたこと。実際に企業で活躍されている方から、貴重な意見やアドバイスもいただけました。2点目は、一年間のグループ活動により、強い団結力が生まれたことです。辛いこともありましたが、PBLで得た力や仲間は一生ものです。
京阪電気鉄道株式会社 経営統括室事業推進担当部長 川添 智史様
「鉄道の利用促進策」というテーマは、正解のない難題です。そのせいか夏ごろまでは試行錯誤が続き、成果が危ぶまれた時期もありました。しかし、当社沿線に出向いての体験、取り組みの中で生じた当社への思いなど、実体験や実感をベースに企画を練り上げたことで、発表会で当社社員が強い関心を示すほど説得力のある提案になったと感じています。
当チームでは、本学の強みである国際交流の視点から、外国人に対し「茶の湯と和菓子」の魅力や「日本の伝統文化としての和菓子」をいかに発信するか、調査・検討しました。具体的には、叶匠壽庵「寿長生(すない)の郷」で留学生や外国人教員を対象にお茶席・和菓子作りの体験イベントを実施。あわせて外国人へのアンケート調査・分析、滋賀県在住外国人との交流に関する協議などを行いました。
これらの活動を通じて、「英語版のホームページや和菓子パンフレットで知らせよう」、「寿長生の郷でアンケートを実施しよう」、「出張和菓子教室@関西外大をしよう」、等6項目を叶匠壽庵に提案。社長はじめ社員の方々から高い評価を得ることができました。
国際言語学部 中井 麻唯子さん
私たちが重視したのは「全員の意見を取り入れること」。そのために、メンバーとの意見交換を密に行いました。また自分の思いをきちんと伝え、相手の声にもしっかり耳を傾けるよう心がけました。お互いの改善点を指摘し合いながら何度も話し合う中で、一人ひとりの役割を考え周囲と協調しながら行動することの大切さを学べたと思います。
株式会社 叶匠壽庵 営業部 営業企画課長 篠原 太幸様
大学と連携して課題に取り組むこと自体が初めてでしたので、最初は不安も抱いていました。しかし授業が進む中、我々の想像以上に学生が主体性を持ち、考え、行動する姿を見て、「その熱意に応えなければ」という思いに変わってゆきました。提案には良い意味で刺激を受けましたので、少しでも具体化し、また次年度のPBLに繋いでゆければと思います。
大阪には世界に冠たる技術とシェアを持つ優良な中小企業がたくさんありますが、学生は就職活動でなかなか目を向けようとはしません。そこで当チームでは、マッチング向上策の立案に取り組みました。実際に中小企業を訪問し、会社説明会や企業研究を体験、そこで得た実感と、一般的に学生が抱いているイメージの差を明確化し、そのギャップを埋めるアイデアや対策を考えました。
マッチング策のベースとして、ほとんど名前も知る機会のない中小企業と学生との接点がどうしたら持てるか、アイデア展開を繰り返しました。語学力や留学経験、学生視点での企業の魅力の発見やその伝達などが双方に活かせないかなど、まずはできるだけたくさんの提案を考えました。
国際言語学部 前山 歩さん
「成長した!」という確かな手応えを感じています。私が実感できたのは、自分だけで考えるのではなく、人の意見を聞き協同で実行するという行動力がついたことと、提案を練り上げ企業幹部への報告をした達成感です。また、企業との懇親会では、仕事に対する責任感やマナーだけでなく、働くことの楽しさや充実感を学び、社会に出て働くことが楽しみです。
大阪府商工労働部 雇用推進室 労務課 渡邉 諒様
今回の授業を通して学生の皆さんが導き出した「大学と中小企業が日常的に接点を持つ」という答えは、大変示唆に富んだ考え方だと思います。またその一例として「企業から通訳を請け負えばどうか」といった、大学が持つ潜在的な力を活かすアイデアは、実現・定着すれば、全国に先駆けた新しいキャリア教育の仕組みになる、と感じました。
大阪・なんば地域では、数多く訪れる外国人観光客に対して様々な取り組みを行っています。その一環として、当チームは「千日前道具屋筋商店街」において、外国人観光客へ消費税の免税販売を促進する企画に取り組みました。具体的には、免税販売に必要な販売マニュアルの作成に試行錯誤しながらチャレンジしました。
販売マニュアルは、免税制度に則った一連の接客応対プロセスを4カ国語(英語、中国語、韓国語、仏語)に展開したもので、操作性や時流を考えてiPadを活用しIT化しました。またパスポート集などの関連資料や販促用のポスター、音声広報なども併せて開発し、トータルシステムとして提供しました。
国際言語学部 新垣 史晴さん
企業の方々に直接プレゼンテーションしたり、地域イベントに企業の一員として参加したり…。学生という立場にありながら、他の学生よりも早く社会の魅力や厳しさに触れることができる貴重な機会がPBLです。楽しさばかりではなく、不安と焦りで辛い時期もありましたが、先生や企業の方々のバックアップで乗り越えることができました。
千日前道具屋筋商店街振興組合 理事 山下 一郎様
商店街が生き残る道を模索する中で、免税商店街の実現という目標に向かって若い学生の皆さんと試行錯誤を重ねることができ、本当に幸せでした。また毎日新聞やNHKで取り上げられるなど、世間の注目度の高さにも驚きました。日本の社会に閉塞感が漂う中、いっしょに活動した学生の皆さんが、新しい日本のリーダーとして活躍されることを祈ります。