FD講演会開く 川那部隆司・立命館大学准教授が「授業改善成果の可視化」テーマに


▲約50人の教員が参加した第5回FD講演会

FD委員会主催の第5回FD講演会が9月10日、中宮キャンパスの多目的ルームで開かれた。講師は立命館大学教育開発推進機構の川那部隆司准教授で、テーマは「いかにして授業改善へのモチベーションを高めるか―改善の成果を可視化する―」。大規模授業でのアンケート活用などの授業改善例を通して、FD活動のモチベーションを維持する取り組みを紹介し、参加した約50人の教員から質問が相次いだ。
 

▲「授業改善成果の可視化」について説明する川那部准教授

川那部准教授は教育心理学が専門で、初年次教育や学習支援などを担当している。この日は、学習に対する意欲や「やる気」を起こすモチベーションを高めるには、「報酬を得る」または「罰を避ける」ための外発的動機づけと、「知的好奇心」「理解欲求」「向上心」をそそる内発的動機づけの2種類あるという話から始まった。外発的動機づけについては、短期的には学習意欲の低い学生に効果があるが、「むやみに報酬を伴わせると、内発的な意欲が低下する『減退効果』が出て逆効果になることがあるので要注意」と指摘した。
 
続いて、立命館大学での実践事例を2件紹介した。最初の例は、スポーツ推薦入試で入学した約200人が7クラスに分かれて受講する初年次科目「特殊講義(学生アスリート)アスリートのためのアカデミック・スキルズ」。情報収集力やコミュニケーション力など6項目の到達目標を設定し、受講前と後を比較すると確実な成長が見られる。川那部准教授は「一般学生の成長度合いと比べても、かなり高いスキルを身に付けている」と述べた。
 
2例目は教養科目「現代の教育」で試みた学習ポートフォリオの導入。期ごとのばらつきはあるが、160~400人が受講する大規模講義で、学習が授業外に展開しなかったり、授業テーマへの興味・関心、疑問が放置されたりするのが、悩みだった。そこで、「自分で調べたことを書く環境を提供してみよう」と、自主学習の方法やその成果を書き込む用紙を配り、学生とやり取りする材料にした。すると、授業外学習時間が確実に増加し、講義終了時には学生から「『考える』ことをしたような気がする」「主体的に調べ物をしたり、考えたりするようになった」といったメッセージが寄せられたという。
 
まとめとして、川那部准教授は「授業改善という教員の行為とその成果が目に見えるようになることが大事。それが、教員同士でその方法を共有し議論する、全体的なFDにつながる」と結論づけた。
質疑応答の時間もたっぷりあり、参加した教員8人が質問。すべてに対して、川那部准教授が丁寧に答えていた。
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