FDカフェ第9話 J.シュルツ講師が「巡礼と留学」を語る

 お茶やお菓子を楽しみながら授業や学問の話に興じるFDカフェ第9話が1027日、中宮・多目的ルームで開かれた。この日の講師は外国語学部のJ.シュルツ講師。「学究的巡礼:留学と学生のトランスフォーメーション」と題して、研究テーマの四国のお遍路さんなど日本の巡礼と留学の関わりについて英語で語った。通訳は、英語キャリア学部3年の佐々木理絵さん。学研都市キャンパスと遠隔授業システムで結ばれ、教職員計約40人が参加、質疑応答も活発に行われた。

▲ 学研都市キャンパスと合わせて約40人が参加したFDカフェ第9話

 

 シュルツ講師は現代日本の宗教を研究しており、留学準備コースなどで本学の学生たちの留学と関わっていることから、巡礼と留学について考えるようになったという。まず紹介したのは、日本から中国に渡った留学生の先駆者たち。天台宗の最澄、円仁、真言宗の空海、禅宗の栄西と道元らについて、「中国に行って、勉強と巡礼をした」と語った。「彼らの留学は非常に高いリスクを伴い、生還の可能性は50%前後だった」と推測。「生還率が50%と聞かされたら、本学では『それでも留学したい』という学生はいなくなるが、『もっと世界を知りたい』『もっと自分を成長させたい』『外の情報を仲間とシェアしたい』という思いは共通している」と話した。

▲ 日本仏教の先駆者たちを例示し、留学との共通性を語るシュルツ講師

 

さらに、世界の神話では、旅に出て苛酷な冒険を通してヒーローになるという典型的なタイプがあることを紹介。日本では、古事記のヤマトタケルなどの伝説が当てはまり、中国には西遊記があると例示した。シュルツ講師は「留学はこれらヒーローの旅に似ている」という学生がいることに驚き、「留学が学生にとってのシルクロードなのか」と感じることがあると話した。

▲ 通訳は英語キャリア学部3年の佐々木理絵さん(右)が務めた

 

 また、通過儀礼という概念にふれ、個人やグループをある社会的身分から別の身分へと変化させる儀礼や経験のことと説明。そのプロセスには、▽分離▽過渡期▽再統合――の3段階があるという。「2年間の留学準備、壮行会などでの内省と祝福の期間を経て、学生たちは分離の時期を経験し、留学先で外大から離れながら留学先メンバーではない、どっちつかずの過渡期に入る」と、夏目漱石がイギリス留学で新しい環境になじめなかった例を挙げて語った。
 

 外国人留学生も本学の留学帰国生も、再統合のプロセスには困難がつきまとい、「帰国生には特別な配慮を必要としている」と指摘。「私のクラスの半数は留学を経験しており、彼らの異文化体験をクラスで共有できる取り組みをしている。また、マンツーマンのオフィスアワーは彼らにとって有意義なようだ」とも話した。

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