【卒業生の皆さま・ご家族の皆さまへ】関西外国語大学短期大学部 学長からのメッセージ(式辞)

 卒業生のみなさんへ

 ご卒業おめでとうございます。

 新たな旅立ちのときです。みなさんの胸中には、いま、このときを迎えた喜びや、あしたへの夢、希望、あるいは、友と別れる寂しさや、再び、未知の世界へと踏み出す、一抹の不安など、さまざまな思いが渦巻いていることと思います。でも、確かなことが、ひとつ、あります。それは、この二年間、本学でしっかりと勉学に励み、友との絆を育み、コミュニケーション力や人間力を磨いて、みなさんが大きく、立派に成長したということです。その自信と誇りを胸に、あしたへ、そして、その先へと、元気よく歩んでいってほしいと願っております。

 保護者のみなさま、おめでとうございます。ご子息、ご息女の、たくましく、しっかりと成長された姿を目の当たりにされ、お喜びは如何ばかりかと存じます。心より、お祝いを申し上げます。

 さて、みなさんは短期大学部、つまり、“ファーストステージでの学び”を終え、就職して社会に出たり、編入学して大学に進んだりと、さまざまな道に進まれます。次なる道、“セカンドステージ”へ踏み出す節目のときに、暫し立ち止まり、来し方を振り返ってみてください。みなさんが本学に入学されたのは、2018年の春でした。二年前の、その入学式で、私がみなさんに何を語り、何を求めたかを覚えているでしょうか。

 私は式辞で「大学で学ぶとはどういうことか」と問い掛け、「教えられたことを覚えるだけではなく、自ら学び、自ら考え、自ら行動すること、つまり、『自学、自習』の実践が強く求められる」と申し上げました。さらに、「大学の授業だけではなく、芸術に触れ、知性を磨き、自分の言葉で自分の考えを発信できるようになり、クラブやサークル活動で友人と出会って感性を豊かにし、強靭な精神力、確かな判断力、しなやかな適応力、大胆な発想力とコミュニケーション能力を持つ学生に成長してほしい」とも要望しました。どうでしょう。いま、振り返って、目標はどこまで達成できたでしょうか。どれだけ、自ら進んで学び、考えるようになれたでしょうか。

 いま、私たちの社会は大きく変貌しようとしています。AI(人工知能)や、ロボット技術、「モノのインターネット」と呼ばれるIoT、ビッグデータなどの先端技術が急速に発展、高度化し、社会のあちこちに浸透して、私たち人間の生き方や世の中の仕組みを根っこから変えつつあるからです。「第四次産業革命」ともいわれる所以です。中央教育審議会は、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」と題する答申をまとめました。驚異的なスピードで、先端技術が“進化”するなか、未来社会において、人が求められる能力やスキルは何なのか、高等教育はその役割と責任を果たすためにどう変わっていくべきか――などを展望し、これからの人材育成と大学改革のあり方を提言したのです。

 では、未来社会で求められる人材、あるいは、能力、スキルとは何でしょうか。答申は「AIは人間の能力をはるかに超えていく」との一部の意見を紹介しつつも、「AIには果たせない、真に人が果たすべき役割を十分に考え、実行できる人材」が必要と指摘、その育成には、「自ら考え、自ら学ぶ」自学、自習はもちろん、例えば、「21世紀型スキル」の修得が欠かせないと訴えています。

 「21世紀型スキル」は、学力などの“ハードスキル”と対比される概念で、効果的なコミュニケーション、創造力、分析力、柔軟性、問題解決力、チームビルディング、傾聴力など、「他者と触れ合う際に影響を与える一連の能力」を指し、付加価値が求められる仕事では、とりわけ重要とされています。確かに、人間が優位に立ち得る力でしょう。答申はまた、学びや人生の「マルチステージ」化も指摘しています。グローバル化や技術革新、あるいは、高齢化が一層進む、これからの時代には、第三、第四、第五のステージも控えているのです。長い人生においては、たえず努力していく姿勢、すなわち自学、自習の継続が必要なのです。

 昨年の流行語大賞には、ラグビーW杯2019で大旋風を巻き起こした、日本代表チームのキャッチフレーズ「ONE TEAM」が選ばれました。代表チームは31人のメンバーのうち、15人が海外出身選手です。「ONE TEAM」は、言葉や文化、歴史の違いを乗り越え、桜のエンブレムのもとに結集した代表選手を文字どおり「ひとつ」にし、史上初のベスト8進出という快挙を達成する原動力となりました。 その背景には、選手一人ひとりがラグビーを愛し、限界に挑戦した練習量、そして夢をかなえるための筆舌に尽くし難い努力、すなわち、自ら考え、行動する思いがあったそうです。

 みなさんはこれから、真っ白い地図と日付しかないカレンダーを持って、新たな舞台へ旅立ちます。その地図とカレンダーに何を書き込み、何色に染めていくのか。すべては自分で決めていかねばなりません。多くの困難や失敗に直面し、悩んだり、戸惑ったりすることもあるでしょう。

 でも、私たちは一人ひとり、自分で自分を決定する力をもっているのです。「私はこう生きる」「ぼくはこう生きる」と、自分なりの目標や夢をはっきりと見定め、自信を持って、地図やカレンダーを自分色で染めていってください。

 最後にひとつ、お願いがあります。「ありがとう」という言葉は漢字で表現すると「有り難い」、つまりは、「そうあることではない」、あるいは、「めったにない」という意味になります。ご父兄をはじめ、保護者の方々は、それほどの愛情、思いを込め、入学時から、いや、その前から、みなさんを支え、励ましてこられました。ですから、「ありがとう」と、心からの感謝の気持ちを伝えてほしいと思います。

 本学も今年は75周年目を迎え、新たな歩みを始めます。みなさんがもし、道を見失いそうになったり、リフレッシュしたくなったりしたときは、ぜひ、母校へ帰ってきてください。みなさんのお力になることをお約束いたします。

2020年3月14日
関西外国語大学 短期大学部
学 長 谷本 榮子
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