「出雲神話」テーマに佐古和枝教授が講演 学研都市8大学連携「市民公開講座」

英語国際学部の佐古和枝教授が9月4日、国立国会図書館関西館(京都府精華町)で開かれた関西文化学術研究都市8大学連携「市民公開講座」で、「考古学から探る出雲神話の謎~なぜ“出雲”なのか~」をテーマに講演した。階段式の大会議室を埋めた約200人の市民に、佐古教授は出身地の鳥取を含む出雲文化圏の視点から、日本の神話や古墳の話をわかりやすく話した。


▲満席となった会場で講演する佐古和枝教授

佐古教授は「歴史を語るにあたって、神話を扱わないのが進歩的とされてきたが、数年前の古事記1300年祭で見直された」と、記紀(古事記・日本書紀)神話の話から始めた。記紀編纂の狙いと背景について、佐古教授は「不安定な朝鮮半島情勢と壬申の乱という国内外の危機を乗り越えた天武天皇の命により、編纂されることになった」と説明。天武天皇は中央集権の国づくりを進めるうえで、歴史書をつくって正当性を示す必要があったといい、「文字は侵略のいいわけを書き残す」というアイルランドの歴史家の言葉を引いて、その意図を指摘した。


▲出雲の遺跡の特徴をわかりやすく紹介

さらに、佐古教授は出雲・伯耆・因幡がひとつの文化圏を形成していた弥生遺跡の発掘成果を次々と紹介。全国最多の358本の銅剣を発掘した荒神谷遺跡や39個の銅鐸が見つかった加茂岩倉遺跡など、この文化圏には国の史跡クラスの遺跡が多数存在することをスクリーン上の地図などで示した。
また、玉造温泉にその名が残る、勾玉や管玉などの「玉作り」は弥生時代前期末から出雲独自の技法によって行われ、その産品は日本列島各地から見つかっている。佐古教授は出雲製の玉が「山陰の特産品」だったと指摘。さらには、弥生時代の先進技術として鉄器の生産を挙げ、弥生時代の遺跡から福岡、熊本両県に次いで、鳥取県で多くの鉄器が出土しているデータを図示。全国最大の弥生遺跡・妻木晩田(むきばんだ)遺跡や青谷上寺地遺跡の例を挙げた。


▲講演後は会場からの質問に、丁寧に回答

時代が下って、近畿や九州では前方後円墳の築造が盛んになっていたころにも、出雲では伝統的な四隅突出型墳丘墓が主流だった。遺跡からの出土品などを検討すると、弥生時代と神話の内容が符合することが多いといい、佐古教授は「出雲神話成立の背景は、弥生時代の状況を考える必要がある」と指摘。「このような話を、出雲の遺跡を訪ねる際の参考にしてください」などと話した。講演後、会場から鉄器の出土数などについての質問もあり、佐古教授は丁寧に答えていた。


▲市民公開講座に期待を寄せる国立国会図書館の片山信子・関西館長

この講座は、学研都市に立地する、奈良先端科学技術大学院大学、同志社大学、同志社女子大学、大阪電気通信大学、本学、大阪国際大学、京都府立大学、奈良学園大学の8大学と、国立国会図書館関西館、公益財団法人・関西文化学術研究都市推進機構の主催。会場は国立国会図書館関西館で、受講料は無料。今年度は9月18日の第3回で終了する。開講前、4月に赴任した国立国会図書館の片山信子・関西館長は「関西圏の文化を担う当館として、この講座は活動のモデルと考えています」とあいさつし、市民公開講座への期待感を示した。
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