≪輝く卒業生≫廣澤麻美さん(京阪電気鉄道運転士、外国語学部英米語学科2009年卒)/入念な準備心掛け、心はいつも青信号

 廣澤さんは現在、京阪電鉄で運転士を務めています。京阪本線京都列車区に所属し、安全を最優先で特急電車などの運転レバーを握ります。

 廣澤さんは、1986年に大阪府門真市で生まれました。2005年短期大学部英米語学科に入学し、2007年に外国語学部英米語学科に3年次編入学しました。卒業後は、運送会社を経て、2012年に京阪電気鉄道に入社しました。車掌を3年務めて運転士になりました。

 

■運転台越しに移ろう四季

 現在、京阪電車の運転士7年目。乗り心地の良い定時運転と積極的なお客様のご案内に努める毎日です。

 鉄道の世界は男性社会で、女性には厳しいと言われることがあります。しかし実際は異なります。女性でも十分に対応できること、女性だから頼られることがあります。また、職場からは「女性運転士を引っ張る未来のエースです」と大きな期待を集めています。

 春になると真新しい制服やスーツに身を包んだ姿、大型連休になると行楽に出掛ける家族連れを目にします。「運転台越しに四季の移ろいを感じられるのが魅力のひとつです」と目を細めます。


▲運転台越しに四季の移ろいを感じることができます

■運転レバーを握るということ

 命を何より大切に考え、お客様を安全に目的地まで運ぶことが何よりも優先され、計り知れないプレッシャーがあります。7年たった今でも、乗務を終えると安堵感とやりがいを感じます。

 初めて1人で運転したときはなぜか「開放感」を感じました。手厚くかつ厳しい訓練の7カ月を終え、ようやく一人前だという気持ちが大きかったからだろうか、時間が経つにつれ開放感は少しずつ不安に変わっていきました。緊急時に適切に、迅速に、そして冷静に対応できるのかという不安が運転するごとに募り、押しつぶされそうになりました。

 新しい装置やシステムの操作方法はもちろん、故障時の対応などの勉強が欠かせません。想像以上に地味な努力の積み重ねが必要な職業であると実感する毎日です。

 
▲“師匠”に見守られながら運転しています(向かって右側)

■2年間で卒業したくない

 短期大学部に入学したときは、2年間勉強し、就職する予定でした。入学してみると英語の学修だけでなく、さまざまな分野の授業に取り組み部活動でも充実していました。「このまま卒業したくない。まだ外大で勉強を重ね、色々な経験をしたい」と考えました。

 友人が就職を決めるなかで、迷うことなく学部への編入学を決心しました。講義の後も、帰宅後も勉強し、今でも思い出すくらいに編入学に全精力を傾けました。

 
▲切磋琢磨し合った軽音楽部メンバー(左から3番目)

■留学生から学ぶ多様な価値観

 外大のキャンパスでは、いつでも、どこでも留学生に出会うことができます。4年間で、外国語を話すことに全く苦手意識を感じなくなりました。

 多様な考え方も学びました。留学生と共に過ごすことで、知らず知らずのうちに世界水準からかけ離れた常識や、行動を縛り付けている固定概念がある自分に気づきました。「考えは十人十色。相手はどのように考えているのかを理解すること、寄り添うことが大切」と感じました。

 
▲所属していた軽音楽部ではドラムを担当しました

■私だからできることを

 新型コロナウイルス感染症が落ち着き、外国人観光客が一気に戻ってきました。ホームで時刻表とスマートフォンを見て立ち往生する外国人をしばしば見かけるようになりました。

 最初は「なんで運転士や車掌に尋ねないのだろう」と思っていました。そのうち「運転士や車掌に話しかけてはいけないと思っているのだろう」と気づきました。今では積極的に声をかけます。「決して流暢ではないけれど、電車に乗れない不安をめぐって少しでも明るく楽しくなってほしい」と思います。

 「語学力を活かし私なりのご案内をしたい」と目を輝かせます。英語だけでなく、他の言語も修得し、外国人のお客様のご案内をスムーズにしたいとの思いから、今は韓国語を勉強しています。

 「相手の母国語でご案内をする日本らしいおもてなしができるように目指しています」と熱く語りました。

 
▲身も心も引き締め運転レバーを握ります

■次の出発に備えよう

 学生時代から今まで明確な目標を掲げていた訳ではありません。しかし「目の前のことに全力投球で取り組んできました」と話します。

 周りに合わせるのではなく、自分が興味を持ったことは、誰に相談することなく一人で取り組みました。「やりたいと思ったときにすぐに始めたかったから」と目を輝かせます。

 そして後輩に向けてこのような言葉を送ります。
 「今の学びや経験が将来に直結していないように思えても、違った角度から外大での学びや経験を思い出す時が必ず来ます。その時にすぐに出発できるように、目の前のことに全力で取り組んでください」。

 
▲淀屋橋行き特急電車を運転しています
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