より良い英語教育をめざして 第4回授業学フォーラム シンポジューム


▲より良い英語教育をめざし、活発な意見交換が行われた

「教員としての英語力と授業力をいかに向上させるか」をテーマに、科学研究費助成事業を活用した「第4回授業学フォーラム シンポジューム」が12月6日、中宮・マルチメディアホールで開かれた。関西はもとより、関東や九州、中国地方からも集まった約170人が熱心に聞き入る中、講師4人による講演と質疑応答が行われ、より良い英語教育について考察を深めた。


▲科研費で採択された研究課題について説明する村上准教授

はじめに、フォーラムを主催した村上裕美・短期大学部准教授が、科研費で採択された研究課題を説明。教員の授業力、英語力、資質について吟味した後、授業を改善する取り組みとして、ポートフォリオや教材の開発、ブログの活用などを紹介した。

続いて▼江利川春雄・和歌山大学教育学部教授、▼鳥飼玖美子・立教大学特任教授/国立国語研究所客員教授、▼斎藤兆史・東京大学大学院教育学研究科教授、▼大津由紀雄・明海大学副学長・教授/慶應義塾大学名誉教授の4人が、それぞれ20分ずつ講演を行った。



江利川教授の題目は「協同的な学びで全員の英語力と授業力を伸ばす」。現在の英語教育政策は、一部の生徒や学生への支援に偏っているが、公教育は全員に質の高い学びを保障しなくてはならない。そのために授業に取り入れた「協同学習」と、その効果を説明。「わくわく・どきどき・ハイレベル」な課題を設定することで、生徒や学生が共に課題に取り組み、自分と仲間の学習を全員で主体的に高め合う様子を紹介した。

続いて、鳥飼教授は「異文化コミュニケーションとしての英語教育」と題して講演。多文化共生が求められる「グローバル市民」の育成には、文化的他者と言葉で関係を築くことを可能にする「異文化コミュニケーション」能力が不可欠。そこで、異文化コミュニケーション能力の養成も視野に入れた英語教育が必要であると話した。



3人目の斎藤教授は「大学英語講師の英語修行」という題目で講演。生徒や学生が文法と訳読の基本を身につけることは、将来の目的に応じた英語学習を積み上げることができる「土台」を築くことと話し、教員はその指導ができる英語力を養わなければならないと説いた。

最後に、大津教授の題目は「スーパーグローバル大学ではない大学での英語教育」。受験生を確保するため、TOEICなど外部テストで高得点をめざし就職率をあげようとする傾向がみられる中、英語学・英語文学の素養を身につけた英語運用能力を育成すること、小学校から大学へと段階が上がるにつれて、基礎から運用へと発展していく一貫した言語教育を行うことが重要と話した。

講演後、あらかじめ配布した「質問シート」を参加者から回収、質疑応答が始まった。「共同学習と一斉授業の効果的な使い分けは」「授業内でコミュニケーションを取れるようにするには」など多数の質問が寄せられ、講師らは丁寧に答えた。また、アンケートには、「自身の英語力や授業力について再考する良い機会だった」「次のフォーラムがあれば、また参加したい」などの感想が多く寄せられた。

なお、このシンポジウムは、「大学英語教員の授業改善を促し授業力育成を可能にするポートフォリオと教材開発の研究」を研究課題とした、「日本学術振興会学術研究助成基金 基盤研究C 代表:村上裕美 24520687」の主催で開催された。
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