ロシアNIS貿易会モスクワ事務所長の長谷直哉さんが、国際関係論と政治学の授業でウクライナ戦争や対ロ制裁をテーマに特別講演しました

 ロシアNIS貿易会(ROTOBO)モスクワ事務所長の長谷直哉さんが10月20日、短期大学部の鶴見直人准教授が担当する国際関係論と政治学の授業で、「ウクライナ戦争と対ロ制裁、ロシアの現状」をテーマに特別講演しました。


▲ロシアNIS貿易会の長谷さんが「現在のロシア」を詳しく講演しました

 長谷さんは、モスクワの日本大使館で専門調査員、外務省で専門分析員を務め、2022年10月からROTOBOモスクワ事務所長として活躍中です。今回、一時帰国した機会に、ウクライナ戦争下のロシアの最新情勢を講演しました。

 長谷さんは最初に「メディアを通じてウクライナを見ていると、まるで全土が戦場になっているかのような印象を受けます。しかし南東部の激戦地以外では日常が続いています」と話し、「戦場と日常が一体化しています。日常の経済活動と復興が同時に動いている不思議な状況」と解説しました。


▲なかなかうかがい知ることができないロシアの内情を聴くことができました

 モスクワでの生活については〝パラレル・ワールド〟という言葉を使い、「戦争下であれば何らかの戦争の傷跡を見るものですが、市街地で普通に自転車レースが開かれ、宇宙ステーション映像を使った映画が公開されています」と話しました。コーラやマクドナルドなど欧米の企業は撤退しましたが、ロシア人が工場を買い取って生産を続け、商品名を変えて販売しています。「戦時の中でも日常は継続しています」と説明しました。


▲撤退した欧米企業の工場をロシア人が買い取り、商品名を変えて販売を続けています

 西側の経済制裁で市民生活は影響を受けているものの、迂回貿易や中国などからの流入で〝ないはずのものがなぜか売られていて買う人がいる〟という状況から、したたかに生活するロシア人について触れました。

 ロシアNIS貿易会はもともと、ロシアへの企業進出や投資についての情報提供、アドバイスなどをしていましたが、現在はロシアからの企業の撤退や事業規模の縮小への情報提供、経済制裁へのロシアの対抗措置の分析などが中心になっています。「ロシアから撤退すると資産を接収される恐れがあります。一方で、ロシアに残っていると〝戦争スポンサー〟として批判を受けてしまいます」と、厳しい現状にある進出企業について述べました。


▲ロシアNIS貿易会の業務が変化したことについても解説しました

 長谷さんは最後に「ロシアはコストを無視して日常生活を演出しています。決して平穏なわけではありません」といい「友好国と非友好国を明確に区別し、中国とグローバルサウスへの傾斜を進めています」「少しずつ戦時経済に移りつつあります」「金融とネットの外からの分断がもたらすものは大きいといえます」と、ロシアの今後を見ていくうえでポイントになる点を挙げました。

 そして〝ロシアから見える世界〟として「欧米や日本を見なくなりました。新しい市場、新しいパートナーを求めて動き始めています」とし「新しい現実、新しい経済がキーワードです。日本、欧米との経済関係の崩壊を前提に動いています」と指摘しました。


▲受講生からの質問にも丁寧に答えました(左端が鶴見准教授、左から4人目が長谷さん)


 
一覧を見る