小中高等学校の先生をめざす学生を対象にした「教員養成特別講座」を開講

11月4日(土)中宮キャンパス・マルチメディアホールで、教員をめざす学生を対象に「教員養成特別講座」を開催しました。

教育現場や学校経営にかかわるゲストスピーカーに講演いただき、現在の教育情勢などについて、普段の授業だけでは知りえない内容について聴講。学生たちにとって、貴重な学びの場になりました。



ゲストスピーカーとしてお招きしたのは、以下のお二方です。

■大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課参事  芳野 和宏氏
テーマ「これからの教員に求められること」

■文部科学省初等中等教育局教科書課 髙橋 瑞人氏
テーマ「デジタル教科書の活用について」


それぞれ、教員時代の自らのご経験、現職の実務などで培われた知見から、実践的なアドバイスをいただくことができました。
 

芳野和宏氏「これからの教員に求められること」




▲ 授業づくりや生徒指導における企画力、アイデアの重要性についてもアドバイスを送ってくださった芳野和宏氏。



大阪府教育庁の芳野氏から、これからの学校教育を担う教員として必要な資質・能力について講演いただきました。

具体的には、

① 個別の子どもの状況を把握する力
② 子どもの主体的な学習を支援するためのスキル・知識・アイデア
③ 探究的な学習や体験活動など多様な授業をデザインする企画力と必要なコミュニケーション
④ 親和的な雰囲気をつくる集団指導の視点と実践するスキル・知識・アイデア
⑤ 多様な「個」の力を伸ばしつつ互いに高めあえる「集団」のあり方についての自分なりの考え

の5つが挙げられ、それぞれの項目について、ご自身の教員としての経験も踏まえながら解説がなされました。

 

講演中、ワークショップとして、「なぜ、学校が必要なのか」「どのような集団が、個を高められるか」といった芳野氏から投げかけられる質問に対して、グループで意見を交換・発表する機会も。




35人のグループで意見を交換。発表も行いました。
 


また、芳野氏が掲げた教員として必要な5つの力について、学生時代から取り組めることも紹介され、例えば①の「個別の子どもの状況を把握する力」は、周りの友人や家族がいつもと様子が違うなと感じたときに、「相手をよく見て、話しを聞き、なぜそのような状態になっているのかを想像してみる。その癖をつけ、丁寧に相手のことを観察するだけでも視野が大きく広がります」と芳野氏。

 

「教育のあり方に絶対的な正解はありません。ただし、自分の中で『こうあるべき』という理想像は持っていてください。それを持つことで、例えば今何をすべきなのか、そのアプローチを実践したけど何が足りなかったのか、といったことが見えてきます。最初から完璧な先生なんていないので、失敗も含めて経験を蓄積し、自身の引き出しを増やしてください」と最後にメッセージを送ってくださいました。

 

髙橋瑞人氏「デジタル教科書の活用について」




▲ 髙橋瑞人氏からは、教育の現場で役立ったオススメ本の紹介も。



文部科学省に出向し、学習者用デジタル教科書普及促進事業を推進する髙橋氏からは、「デジタル教科書の活用について」をテーマに講演いただきました。

 冒頭、現在の学習指導要領とGIGAスクール構想(11台端末・高速ネットワーク)の概要とともに、その環境下で利用されているデジタル教科書で「できること」として、

・拡大表示
・書き込み
・データの保存
・音声読み上げ


などの機能が紹介されました。



▲実演を交えながらデジタル教科書の機能を紹介してくださいました。
 


また、デジタル教科書の効果的な活用例(外国語)として、全国の小中学校の事例の紹介も。 

学習指導要領で掲げられる「個別最適な学び」「協同的な学び」に連動した活用法として、英語の表現などの確認・練習(音声読み上げ・単語帳の作成)や、ペアやグループでの学習活動(学級全員の児童生徒の書き込みを同時に共有)などが紹介され、実際の授業で具体的にどのように利用されているのかを学びました。


▲全国の小中学校のデジタル教科書の活用事例を写真や動画を使って紹介。


講演の最後に、教師に必要な資質として、 

① いつも笑顔でいること
② 孤独に耐える力をもつこと
③ 無駄とわかっていることに取り組めること
④ 子どもと一緒に馬鹿げたことを一生けん命にやるのを楽しめること
⑤ いつでも変われること。今を壊し、新しい自分となることを怖れないこと

という現役の中学校教諭であり、文学教育者でもある堀裕嗣氏の言葉を紹介。

 

そして、「実践での経験は大切ですが、それだけに頼るのではなく、裏付けとなる理論の部分を意識することも大切です。その理論と実践を繰り返す中で、より良い学級づくりにつなげていってください。特に先生になりたての頃はうまくいかないことも少なくないと思いますが、『なぜ、学校の先生になったのか』『どんな先生になりたいのか』『子どもたちにどんな人生を歩んでほしいのか』といったことを自らに問い続けて、教員として成長していってほしいと思います」とメッセージを送ってくださいました。

 

参加者の声




▲グループワークで話し合ったことを発表する学生。いい意見交換の場にもなったようです。



今回の教員養成特別講座には34年生を中心に、12年生も含む幅広い学年の学生が参加しました。
参加者の声をいくつかお届けします。
 

【英語キャリア学科小学校教員コース3年 谷口 智紀さん】
教員採用試験を終え、これから自分が教師になることを考えて参加。教師になるまで1年半ありますが、今回の講座で学んだことについて「自分なりの答えを考えたい」と思いました。講師の方も「答えはない」とおっしゃっていたので、これからも教育について多角的にアプローチし、自分の知見を深めていきたいと思います。

 

【英語国際学科4年 郭 東暁さん】
来春から中学校の英語の教師として教壇に立ちます。卒業までの約5カ月、生徒のために何ができるか、自分に足りないのは何か、といったことを一人で考えていましたが、「学生時代から取り組めること」「読むべき本」などを具体的に聞けたのがよかったです。

 

【英語キャリア学科小学校教員コース3年 松尾 萌々子さん】
教職の世界の先輩方の貴重な話を聞くことができて、いろいろと参考になりました。特に大学の授業で疑問に思っていたこと(チャットGPTなど生成AIの活用、取り扱いなど)について聞くことができ、その答えやヒントを得ることができたのは自分にとって大きな財産となりました。

 

【英米語学科4年 藤原 愛実さん】
学校現場で求められているチカラやICTをどのように取り入れていいのかを伺うことができ、これからどういったスキルを高めていけばいいのか、自分の中ではっきりイメージできました。教員になるに際して不安も大きかったですが、「最初はできないのが当たり前」というお話もあり、勇気づけられましたのもよかったです。

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