音声認識・対話技術の先端企業「フュートレック」社長・藤木英幸さんのトップ講演会開く


▲「人は一生挑戦です」と後輩たちに呼びかける藤木英幸さん

本学の卒業生で、音声認識・音声対話技術の先端企業「フュートレック」(本社・大阪市)社長の藤木英幸さん(54)を招いてトップ講演会が6月25日、中宮キャンパスの谷本記念講堂で開かれた。携帯電話の「着メロ」の発案者で、転職を繰り返しながら、起業した経験をもとに、「人は一生挑戦」と後輩たちに訴えかけた。


▲トップ講演会は谷本記念講堂で行われた
 
トップ講演会は毎年の恒例。中宮の学部や短大部でキャリア関連の科目を受けている学生の授業の一環で、この日は計約500人が出席した。これまではマルチメディアホールで行われていたが、今回は同講堂で行われた。

藤木さんは1983年3月、外国語学部英米語学科卒。この日のテーマは「Keep on  Challenging」。フュートレックは2000年4月の設立。資本金約7億円。連結会社を含む従業員128人で、▽ユーザーの声を機器に理解させる音声認識▽機器に文章を発話させる音声合成▽双方を組み合わせて、機器との会話する音声対話の技術で事業を展開している、などと自社について紹介した。
 
この後、自身の学生時代を披露。入学後、ネイティブ教員の会話が分からず、早くも5月病になったこと。アルバイト生活に明け暮れ、1年の成績は最低。それでも、踏みとどまって卒業。当時あった「ハワイ校」への短期留学の思い出などを振り返った。
 
半導体などを扱う商社に新卒で入り、7年間在籍。実力主義の方針と聞いて受けた昇進試験で、やはり年功序列を感じ、外資系の半導体メーカーに転職した。ここで、外大出身の自分の英語が通用せず、勉強し直す。ヘッドハンティングで日本企業に誘われたが、断ると、技術者を集めて子会社を作る条件で転職に応じ、経営について学ぶ。順調に進んだが、起業を親会社と話し合い、円満に子会社ごと独立したのがフュートレックのスタートと、40歳までのサラリーマン時代を語った。
 
当初は25人で。ネットバブルが崩壊した時期となり、事業資金集めに苦労した。当時はほとんど同じだった携帯電話の着信メロディーに電子音を活用して変化を持たせることを着想して開発。大手の企業とのコンペに参加し、NTTドコモの標準音源への採用を勝ち取った。これで新興企業市場・東証マザーズへの上場も果たした。
 

▲藤木さんは笑顔を絶やさずに語りかけた

以後、「けいはんな学研都市」にあるATR(国際電気通信基礎技術研究所)の音声認識技術を携帯電話に取り込むように共同開発し、新たに登場したスマートフォンでのこの技術をめぐって世界的な企業と競争するとともに、2020年の東京オリンピックに向けて音声認識の多言語化と翻訳・通訳を英仏独中韓西露タイ・ベトナム・マレーシアの10カ国語に対応させ、観光立国・日本への貢献を果たそうと取り組んでいる。
 

▲静かに聴き入る出席者

藤木さんは終始、ソフトな語りで、後輩たちに弁護士や医師、教師といった専門家の話すことを鵜呑みにせずに「疑うことのすすめ」を説いた。そのためには、「しっかりと周囲の意見を聞き、最後は自分で判断する」ことが伴うとした。さらに実社会は「黒」と「白」の間に幅広い「灰色ゾーン」がある。法律や規制はクリアしていても、道義的に問題となるケースが多々ある。「その分かれ目はどこか。どこで黒と白が分れるのか。その線引きはしっかり判断してほしい」とアドバイス。「どんな職業・職種でも、誇りが持てる仕事をしよう」と呼びかけた。
 

▲最前列から質問をする短大部1年の近藤貴裕君

会場では学生がペーパーに書き込んだ質問に藤木さんが回答。また最前列から短大部1年の近藤貴裕君が10カ国語対応する音声認識の取り組みについて質問。「語る体験の一つひとつの内容が濃かった。やる気になれました」と話していた。
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