天理大学の初谷譲次教授がメキシコ・マヤ人の抵抗の歴史と現在について講演しました/イベロアメリカ研究センター連続公開講座

 メキシコの先住民をテーマに開催しているイベロアメリカ研究センター連続公開講座の第2弾が10月26日に開かれ、天理大学の初谷譲次教授が「ユカタン・カスタ戦争の終焉と終わりなき抵抗-近代メキシコを生きるマヤ人の再領土化戦術-」をテーマに講演しました。


▲メキシコ先住民をテーマにした連続講座の第2弾です

 初谷教授はメキシコ史が専門で、マヤ人の歴史研究の第一人者です。メキシコ南東部のユカタン半島にはマヤ語を話すマヤ人が100万人住んでいます。マヤ人の大反乱といわれた「カスタ戦争」(1847~1901年)は、メキシコ史上最大の先住民の反乱でした。初谷教授は、スペイン人の征服からカスタ戦争を経て現在に至るまでのマヤ人の抵抗の歴史について話しました。


▲マヤ人の抵抗の歴史を中心に話しました

 初谷教授は最初に「本当に驚きました」と前置きして、2021年5月のマヤ人抑圧に対する謝罪式典について触れました。「メキシコ大統領が〝ひどい虐待を受けたマヤ人に心から謝罪します〟と述べました。スペインの植民地期だけでなく、メキシコ独立後についても謝罪したことに意味があります」と話しました。


▲現地の膨大な資料調査の結果をもとに分析しました

 19世紀は200もの反乱が起きた〝反乱の世紀〟と言われています。カスタ戦争は54年間続いた最大の反乱で、戦死者は15万人を数えました。反乱軍が半島の3分の2を制圧した時期もありましたが、政府軍の巻き返しや反乱軍の分裂などでゲリラ戦となってしまいました。


▲カスタ戦争をめぐる現地の展示について説明しました

 一般的には「マヤ人と白人の対立」という民族間の憎悪によって反乱が始まったとされています。しかし初谷教授は、公文書館に残された膨大な裁判記録を調査するなど社会科学的な分析を進めた結果として「サトウキビ農園の開発のための土地の収奪が原因ではなかったか」と指摘し、一般的な民族間憎悪が原因とする見方に疑問を投げ掛けました。


▲カスタ戦争の原因を探りました

 また初谷教授は、観光開発が急速に進む現在のクルソーマヤについて報告しました。マヤ教会では、閉鎖的な空間でマヤ人たちがマヤ支配の復活を祈っているなどと思われがちですが、実際には異なっていることを現地の様子を交えて話しました。


▲社会科学的な視点の重要性についても触れました

 初谷教授は「再領土化」という言葉をキーワードにして「虐げられたとか可哀そうだとかいう歴史の中に押し込めるだけではなく、社会科学的な視点から、先住民がいかに工夫をして自分たちらしい生き方をしてきたのかということにも目を向けるべきではないでしょうか」と締めくくりました。




 
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