第9回IRI言語・文化コロキアム開催 日本語と他言語の対照研究をテーマに4氏が講演

 国際文化研究所(IRI)の公開講座、第9回IRI言語・文化コロキアム「日本語と他言語の対照研究―これまでとこれから」が1月27日、中宮キャンパスのマルチメディアホールで開かれました。竹沢幸一・関西外国語大学教授、野田尚史・日本大学教授、井上優・日本大学教授、堀江薫・関西外国語大学教授の4氏が講演した後、全体討論で意見交換しました。


▲マルチメディアホールで開かれた第9回IRI言語・文化コロキアム

 冒頭、IRI所長の塚本秀樹・関西外国語大学教授が開会のあいさつを行い、益岡隆志・大学院外国語学研究科長の司会で進行しました。


▲日本語と英語の対照研究について講演する竹沢幸一・関西外国語大学教授

講演➀ 竹沢幸一・関西外国語大学教授「日本語と英語の対照研究―時制節と非時制節―」
 竹沢教授は、以下の英語の例文を示しました。
 It is likely that John will leave. (時制節補文)
 John is likely to leave. (非時制節補文)

 英語の主語の繰上げやコントロールは非時制節補文のみに現れると指摘。一方、日本語の場合は、「太郎が帰るそうだ」(時制節補文)と「太郎が帰りそうだ」(非時制節補文)を比較し、繰上げは非時制節の現象であり、コントロールは時制節の現象として、「日英語の共通点と相違点をどのように体系的にとらえるか」と問題提起しました。


▲日本語とスペイン語の対照研究について講演する野田尚史・日本大学教授

講演② 野田尚史・日本大学教授「日本語とスペイン語の対照研究―とりたて表現―」
 野田教授は、「このかばんは、この店でしか買えない」など、文のある要素を際立たせ、特別な意味を加える「とりたて表現」に関し、限定・極端・類似の意味を表す語について、日本語とスペイン語を比較。とりたて表現は両言語とも使われるものの、反限定・反極端・反類似の対象をぼかす表現は、日本語では使われるが、スペイン語ではあまり使われないとしました。

 一方、日本語のほうがスペイン語よりぼかす表現が好まれるとの見方を否定し、「日本語は高コンテクスト言語」との従来の通説に疑問を投げかけました。


▲日本語と中国語の対照研究について講演する井上優・日本大学教授

講演③ 井上優・日本大学教授「日本語と中国語の対照研究―コミュニケーションにおける印象と実際―」
 井上教授は、日本語と中国語の文の述べ方について、「中国語は日本語よりも聞き手に強く働きかける表現を好む」「日本語は中国語よりも聞き手にひかえめに働きかける表現を好む」との印象を提示したうえで、実際はどうなのかを両言語の直接依頼文と間接依頼文、疑問文と確認文などを比較し考察しました。

 そのうえで、中国語の場合、話し手の認識こそが文の述べ方を決める基準となるのに対し、日本語の場合、聞き手の認識を談話の内部で尊重しなければならないことから、両言語では、対応する表現の聞き手に対する働きかけの強さが異なり、ずれが生じると結論づけました。


▲日本語と韓国語の対照研究について講演する堀江薫・関西外国語大学教授

講演④ 堀江薫・関西外国語大学教授「日本語と韓国語の対照研究―相対名詞修飾節構文―」
 堀江教授は、<「頭がよくなる」薬>といった、名詞修飾節構文について、日本語と韓国語の対照を行いました。主名詞の分類で見ると、<「文子が座った」後ろに>のような空間関係では、韓国語は成立しない場合が多く、言語的な明示化が必要としました。<「学校を卒業した」後に>のような時間関係では、韓国語は成立する場合としない場合があり、<「火事が広がった」原因>のような因果関係は韓国語も成立しやすいとしました。韓国語は、連続性の短絡の許容範囲は日本語とおおむね類似しているが、日本語に比べると短絡を避け言語補正を行う傾向が強いと推論しました。

◆全体討論
 講演の後、質疑応答と全体討論が行われました。4氏は日本語と他言語の対照研究の現状や今後の見通しについて述べ、この分野は研究者の年齢が比較的高く、テーマが固定しがちだとして、若手研究者の参加やテーマの多様化に期待が示されました。
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